二周年記念小説 | ナノ

冬に咲くひまわり


「ねーねー愛惠、あんた気になる男子いないの?」

「んー、そうだなぁ……特進科のブランキスキ先輩が気になる。」









まさかこの発言が、このような展開を生むなんて……誰が想像しただろうか。

僕とお付き合いしてください。
ちなみに拒否権はないよ?

つい数分前まで親友のミキと一緒にお弁当を広げて4限目の授業の愚痴を漏らしながら目の前のカラフルなお昼ご飯をつついていたのだ。
それなのに何故ここにいるのか。
なぜ校舎裏で、昨日申し訳程度の恋バナの話題に出てきたブランキスキ先輩に半ば脅しとも取れる告白を受けているのか。
それを説明するのに、私の持つ情報量では説明不足も甚だしい結果になるだろうことは明確だった。

「あの、……つまり?」

目の前でニコニコと微笑んでいるイヴァン・ブランキスキ先輩は、このマンモス学園の高等部特進科の留学生である。
ロシアの出身のようで、透き通るような白い肌と触り心地の良さそうな白い髪。そしてトレードマークとも言える白いマフラーは、彼の存在を有名にするには格好の的だった。
木陰が揺れて、太陽の反射で綺麗な髪の毛が輝いて見える。
って、じゃないじゃない。何この状況?
イヴァン先輩は私を見て少し困ったような顔をして口を開いた。

「ん、分からなかった?じゃあもう一回言うね。
普通科高梨愛惠ちゃん。僕のものになってよ。」


えええええ!何言ってんのこの先輩!

「で、返事は?うんかはいで答えてね。」

「はいいいいい!!!」



蛇口を持ったロシアさんとお付き合いすることになりました。










「ミキー!!」

「愛惠あんたどーすんのー!?
イヴァン先輩、裏番長してるとかやばいところと繋がってるって有名なんだよ!?」

「どどどどーしようーーー!?!!」

きっと今までで一番白い顔で親友に泣きつくと、ミキは心配そうな表情で抱き止めてくれた。
身長差がそれなりにあるのでお腹に手を回して強く引き寄せた。

「ごめん…もしかしたら私の所為かも……。
私が昨日あんな話しなきゃ…。」

「そんなこと無いよ!!
でもどうしよー明日からお弁当食べる約束しちゃったあああ!」

そうなのだ。ブランキスキ先輩は
明日からお昼迎えに行くからお弁当食べようね。
そう言って去っていった。

何がしたいの、私は何も持ってませんから美味しくないから食べないでくぁwせdrftgyふじこlp
そして私は、明日から始まる恐怖の予感から逃げるようにミキに泣きついた。




*




翌日。
本当に普通科まで迎えに来たブランキスキ先輩を見て、噂は瞬く間に広がっていった。
私はブランキスキ先輩の後ろについて屋上へつくと、少し風の強い外で恐る恐るお弁当を開いた。
青いベンチに腰掛ける私と先輩の距離は、ちょうど人一人座れるぐらい空いている。

「どうしたの?食べないの?
ひゃ〜、君って美味しそうなもの食べてるね。
ねえそれって手作りなの?」

「は、はいっ!?はい、そうですが!!」

思わず条件反射で大声を出してしまった。
けれどブランキスキ先輩は気にしない様子で私の弁当を興味深気に見つめていた。
その姿が少年を思わせて、私が先程まで抱いていた恐怖心は少しだけ薄れていた。

「あ、あの……なにか、要ります…か?」

「えっ」

「えっ……。あ!
やっぱりこんなお弁当要らないですよね、すみませ」

恐れ多いことを言ってしまった、と私は直ぐにでも前言を撤回しようとするが、そこで今度は慌てたブランキスキ先輩の声に止められてしまった。

「あ、待って待って!
そうじゃなくてその……くれるとは思わなくて…。」

「あ……。
そう、でし…た……か。」

「うふふ、じゃあこの変な形のやつ、もらってもいい?」

照れくさそうに指さしたのは、タコさんウィンナー。
なかなか可愛いものを選ぶなと思いつつもおずおずとお弁当を差し出すと、ありがとうと少し笑ってマフラーを口まで覆った。

「嬉しいなあ……僕、お友達とお弁当食べたりとかしないから、こういうのあんまり無くて……
うふふ、恋人っていいね。」

首をすぼめてはにかむ先輩はとても悪い人には見えなくて、私はその時すっかり当初の恐怖を拭いさっていた。



「あの……もし良かったら、明日からはお弁当作ってきましょうか?」













「……で、別れ話を切り出すどころか余計親しくなったと…。」

「です……。」

「お人好しも大概にしなさい!
確かにあんたには怖い人には見えないだろうけど、噂もあるんだし……。」

「でも、とてもそんな人には…。」

「愛惠の言うことは信用したいけどさ……火のないところに煙は立たないんだよ?」

そう、なのかな?
私が噂で聞いていたブランキスキ先輩と、実際に会った先輩との印象のズレに、どちらを信じればいいのかわからなくなってきていた。




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