元々バレー観戦が好きで、強豪と呼ばれるこの学校を選んだ。入学してからは友達を引きずって、体育館上から汗流すバレー部を見るのが日課となっていた。
さすが強豪と言われるだけあって練習の質も選手の層も厚い。梟谷を決めた理由のひとつである木兎さんの練習姿も見れて、私の高校ライフは相当に満足だった。これからは堂々とこのバレーが見れると思うと一気に胸が踊ったのだ。

練習や試合を見に行くにつれ、私は一人の選手に目をひかれるようになっていた。彼はよく壁打ち際で一人練習していて、そのサーブの正確さやレシーブの安定力、そして何より繊細で意思のあるトスが私にはキラキラと輝いて見えた。ビー玉のように強く、キラキラと。
まだまだ荒削りな部分は多いけれど、着実に光を色濃くしている。同学年であった彼の名前を知るのはそう難しくなかった。






正直に言えば私は赤葦が苦手だ。
色々理由はあって、それは片手じゃおさまらない。
それなのに女子会トークで男子の話になると必ず赤葦の名前があがる。折角楽しくおしゃべりしていたのに、ヤツの名前が出た瞬間に気分は一気に下降する。
今日も今日とてファミレスの一角で開催された女子会の話題は、学年男子品定めに華が咲いていた。そうすれば当然のように「赤葦」の名前は出てきて、私の顔はあからさまに歪んだ。


「名前、顔恐い」
「赤葦の話題はやめよう」
「そんなこと言ったってイケメンじゃん」
「クールだし」
「バレー上手いし」
「何気優しいし」
「ねー」
「名前あんた、告ってふられたくらいで逆恨みしないの」
「…世知辛い世の中だ」

女子の中では彼の株はとても高い。別に彼の悪口を言いたいわけではないし、あえてその株を下げようとしているわけではないけれど…。ヤツをほめる言葉を聞く度に思い出すのだ。晴れ晴れとした体育館裏での出来事を…
バレー部で汗を流す彼の名前を知って目で追う内に、木兎さん中心のバレー観戦模様から一変。私の趣味は恋模様へと変化した。
毎日彼を見ているうちに、胸の高鳴りが恋だと自覚するのは容易だった。

そして、告白したあの日。私はまんまと玉砕した。
そうだ。周りの言うとおり。ただの逆恨みであって、赤葦本人は何もしていない。結局はとばっちりだ。
それでも、彼の名前を聞くたびに跳ねるようにビー玉が触れる。諦めなくてはいけないのに、どうしても、熱い衝動が走る。
気分が下がってしまった私は戦線離脱し、ズルズルと甘いジュースを吸う。横から氷がカラカラと鳴る音が聞こえる。やっと話題が移りそうだと言うとき。空のグラスを傾ける友達に、メニューを開いて話しかけようとした。するとその前に、彼女はポツリと声を通した。

「私、赤葦くんが好き」



ガラス玉はコロコロ転がって、また跳ねて、私の足元でガチャリと割れた。

続きます

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