▼山口
「あ、…山口くん?」
駅前商店街でコロッケを食べながらフラつく彼を見た。視界をちらついた艶やかな金糸の髪に、ちらりと昔を思い出す。
父親同士が昔に仕事仲間で、両家の交流はそんなに多いものではなかったのだけれど。それでも彼の事はよく覚えている。
何でココにいるのかさっぱりわからないけれど、迷子になっている(だろう)人を放っておくのは気が引けておもわず声をかけてしまった。
「ゲ、なんでお前がいんだよ」
「相変わらず失礼なヤツね」
「丁度いい、駅はどっち?」
「駅?反対方向ですよ山口くん、何処いこうとしてたんですかー」
「………ちっ」
ブツブツと何か言ってるくせに踵を返して歩いていく方向は、駅とは違う方だ。
…こいつは馬鹿。心からそう思った。
「…迷子を見つけたからには責任をもっておうちに届けます」
追いかけて裾をひっぱって
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