愛をお召し上がりください。

5講まで授業が会った日の放課後は、大抵研究室で数字と記号の羅列に指をすべらす。今日も決まって一段落ついたのは針が8時を過ぎた頃で、本を開いた時にいれたコーヒーはすっかり冷めてしまっていた。
だいぶ長い時間机に向かっていたせいで首が痛い。捻るとポキと音がなった。
首の痛みが大分和らいだ次には眠気の波が襲ってきて、瞼が重い。生憎冷めたコーヒーは好きではないので、代わりに一つ大きな欠伸をした。と、欠伸をした時伸ばした腕が掴まれ、回転イスがくるりと反転。直後に不機嫌そうな彼が視界を埋めた。

「まだ帰んないの?」
「ん…帰るし…眠たい…」
「そりゃあんなに集中してたら眠くなる」

もしかして、ずっといたの?と聞くと別にと素っけない返事。でも、ケン君の飲んでいたコーヒーに触れると、それもまた同じように冷えていたのが、答えだ。

「ほら」

ケン君は私の頬に温かいのをくっつけて、さっさと帰り支度をはじめた。温かい、ミルクだけ入ったアメリカンコーヒー。
プルを開けて一口飲むと冷えた食道を緩く温めていく。
温かい、彼の優しさはとても。

「帰ろっか」

外に出ると辺り一面の白。静かに積もる雪の綺麗なところに、二人分の足跡をつけていく。
この時間はバスもないし今日に限って車がパンクしてしまったから、時間をかけて歩いて帰る。
5分も歩いていると、寒さが体に溶け込んできて、きっと鼻が赤くなってるだろうなあとケン君を見たらカイロ手袋持参の用意周到。
かじかむ指先を合わせて擦って、手袋持ってくればよかったと後悔しても後悔先に立たずな自分。



やまけんのてぶくろをひとつずつはいてはいてないもうかたほうのてを繋いでやまけんのポケットの中へ。ポケットの中で婚約指輪が光る。途中でおしるこを買って(カフェインあるからコーヒーアウト)やまけん甘いの苦手そうだけど一生に飲んで帰事につく。




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