「いざやくん、いざやくぅ〜ん!!」

今にも決壊しそうな程涙を浮かべて走り寄って来るサイケ。今まで昼寝をしていたから、怖い夢でも見たんだろう。キーボードを叩く手を止め、そちらを見遣る。

「いざやくんきもちわるいぃ〜。」

……えーと?俺が気持ち悪いのかな?サイケたん。

口端を若干ヒクつかせながらも、優しげに聞いてやる。

「どうしたんだい?」
「あのね、あのね……」

さっきまでの勢いとは裏腹にもじもじとし始め、やっと出した言葉が、

「………ぱんつ」

何だろう?サイケたん天使すぎて言葉が通じません、ボスケテ。

「うん、パンツがどうしたのかな?」
「……なんかベトベトしてね、きもちわるいの。サイケびょうき?サイケびょうきなの?」

うるうるとした瞳でこちらを見てくる。どうするアイフル。……それよりも、精通まだだったんだ。てか有るんだ。肉体年齢は俺と同じはずだから、なるならとっくになってると思ってた。

「病気じゃないから大丈夫だよ。」
「……ほんと?」
「うん、本当。」
「いざやくんもなる?つがるも?」
「なるなる。」

サイケたんがなるなら津軽もだよな、多分。しかしこの子は何見て夢精したんだ?

「……サイケ、夢で何見てたの?」
「ん?つがるっ!!」

んーと?

「サイケ、お風呂入って着替えてきな?」
「うん!!」

トタトタとバスルームへ向かうのを見届け、

「つーがるくーん?いらっしゃーい?」

呼び付ける。

「……何だよ。」
「俺のサイケたんに手ぇ出した?」

津軽は眉間にシワを寄せる。まー、シズちゃんに似て憎たらしい顔だこと!!顔同じなのにシズちゃんと違って優しいし、すぐキレないからちょっといいなって思ってたけど、やっぱ基は一緒だね!!手が早いったら!!シズちゃんなんか隙あらば押し倒そうとしてきて……って、その話は今はどうでもいいや。

「…キスは?」
「した。」
「……舌は?」
「入れた。」
「…………………」
「ヤってない。」

しかしヤられる。近々絶対。俺のうさぎが狼に喰われる。あぁでもサイケも津軽のこと好きなんだよね。だったら見守ってあげるのが親心。そうだよ、津軽はシズちゃんと違って優しいから乱暴にとか無理矢理とかしないし!!

「あっ!つがるおはよー!!」
「サイケ」

風呂から上がってきたサイケは、またトタトタとこちら側に向かって来て、津軽の胸に納まる。

……もう、二人が幸せならそれでいいや。うん。

「津軽、ヤってもいいけど優しくね。嫌がったら絶対止めるんだよ?」
「………わかった。」

足を椅子の上に持ち上げ、体育座りになりうずくまる。

何だろう。俺可哀相じゃない?未だにちょっとダッチワイフ疑惑払拭されてないんだけど。

ガチャ

「あっ!シズちゃーん!」

ん?シズちゃん?

不意に顎を持ち上げられ、間近には小憎らしい顔。

「臨也。」



……傷心に浸る時間を、俺にくれ。









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