人生の晴れ舞台結婚式。
女性の憧れであるウェディングドレスは真っ白だと相場が決まっているのに、先程渡されたドレスは、まるで夜の空のように真っ黒だった。
 
黒のウェディングドレス
 
雑誌の表紙を飾ると言われてわざわざチャペルまで連れて来られたのだが、何故こんなものを渡されたのかは分かっていなかった。マネージャーを問いただして聞いてみると、写真が飾られるという雑誌はゲイ専門の雑誌だったらしく、相手が男だったのも納得した。
ウェディングドレス=白という常識を打ち破ることがしたかったらしいが、正直黒だったら普通のドレスだと思われるのではないのか。
それに、腑に落ちないのは黒だからではなく、何故自分にドレスが渡されたのかということだ。しかも相手はあの気に食わない相手、坂田銀時だったからなおのこと腹立たしい。
 
実はモデルの土方と、俳優の銀時は付き合っている。マスコミにばれてはいないが、雑誌の表紙の格好だと俺が女役だと言っているようで恥ずかしくてならない。(実際その通りなんだが)
「さっさと脱いで帰ろう…」
鏡越しに背中を見ると、服はチャックで留められている。一番上に留め具がついているが、これに手が届かない。身体が柔らかくないのは自覚していたが、こう届かないとイライラしてくる。さっき怒りをぶつけてマネージャーは当分目覚めないだろう。
「仕方ねぇ、誰か呼んで…」
「なんで銀さん呼ばないの?土方君、銀さんが服脱がせるのは得意だって知ってるでしょ?」
「ぎ…じゃねぇ坂田!気配殺して近づいてくるんじゃねぇよ!」
「だって土方君がずっと鏡見てこっち全然見ないからさー」
驚くほど自然に方に口付けしてきて、驚いて坂田の鼻に裏拳をぶちこみそうになった。避けられてしまったが。
「あんまくっ付くんじゃねぇよ!」
「あららーさっきはあんなにくっ付いてきてくれたのに」
「さっきのは撮影だろ!」
「あ、だからハメ撮りプレイ好きなのか」
「す、好きなわけあるか!つか外でそういうこと言うんじゃねぇよ!」
「はいはい。それよりさー、どう?銀さんもきちんとするとかっこよくない?惚れ直さない?」
「元から惚れてねーよ」
そう口では憎まれ口を言ってしまうが、確かにきちんとしてると坂田は格好いい。きっちり演技してるときは特に。いつもがとんでもなくだらしないだけにギャップがすごい。それに今日はあのうざったい髪がまとめられてて三割り増しでかっこよく見える。悔しいが。
「土方君はいつも可愛いよ。それに今日は俺だけの花嫁だもんな」
「うるせー誰が可愛いだ…」
自分でも顔が赤くなってるのが分かる。銀時は楽しそうに笑っているが。自分でもなかなか素直になれないこの性格は厄介だと思っているが、それでも坂田はそんな俺に愛想を尽かさず一緒にいてくれる物好きな奴だ。
「ねぇ土方、そのウェディングドレス、貰っていいってスタイリストが言ってたよ」
「はぁ?いらねぇし」
「そんなこと言ってー結婚式プレイしようよー」
「は…って引っ張るなコラ!」
楽屋からチャペルまで腕を引かれていく。チャペルには人は誰も居らず、照明もついていないが、ステンドグラスから差し込む光で十分明るかった。
「ったくおめーはほんとそういうことばっかだな!」
「そういうことって?」
「だからヤりてーとかプレイとか…」
「だって土方普段はSの割りに陵辱されると超喜ぶじゃん?銀さん、土方の喜ぶ顔がすきだから」
全身がカッと熱くなるのが分かる。つーか喜んでるのばれてたのか…!!
「ねぇ土方、そのウェディングドレス、銀さんの精液で真っ白にしてもいい?」
髪の毛に口付けられてドヤ顔でそう言われた。
「そう言うと思ってたわ馬鹿が!」
ためらいのないストレートパンチを鼻に打ちこんで昏倒させた。ばったりとその場で倒れている坂田を踏んづけて、
「か、帰ったらしてやるよ、銀時」
「ツンデレ最高…」
銀時はそうつぶやいてがくりと床に突っ伏した。
ていうかこのドレス一人で脱げないの忘れてた…。
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