「ナマエっち、ずっとずっと大好きっスよ。このまま永遠に2人でいたいっス」


私を抱きしめながら言い終えた後に、恥ずかしいっス、と私を抱きしめたまま顔を押さえてもじもじと変な動きをする彼。彼のそんな行動一つ一つも愛おしいなぁ、なんて思ったけれど永遠、と言う言葉に変に反応してしまう自分がいることに気付いた。明らかに釣り合っていない、モデルでバスケ部スタメンの黄瀬くんと、何のとりえもない私、こんな私たちの関係に永遠なんてあり得るんだろうか。私よりかわいい子なんてごまんといるし、私より性格のいい子もたくさんいる。私にはどんなに前向きに考えても、二人の間に作れる永遠は一つしか見つけられなかった。


「ねぇ、涼太くん。私涼太くんのこと大好きだったよ」
「だったって、今はどうなんスか?…まさかこんな唐突に別れ話、じゃないっスよね?」


私の冗談だと思ったのか、最初はいつもみたいに笑っていた彼の声色が私の沈黙を受けて、段々と真剣なものに変わる。私の背中に回された腕にぎゅっと力がこもるのを感じた。その彼の腕が震えているのに気づかないふりをして、彼に反応させる隙もなく一気にまくしたてる。


「他のファンの女の子たちに悪いからって、学校では素気なくしても二人きりの時は甘えてくるところとか、優しいところ、明るいところ、仕事で会えない時もきちんと連絡くれるところとか全部、全部大好きだったよ」
「…俺の言ったこと、無視しないでくださいっス。それなら、別れる必要なんて何もないじゃないっスか」


抱きしめられている私には彼の表情は解らないけれど、腕だけでなく声も震えていたからきっと彼は泣いているんだろうな、とぼんやり考える。本当、自分でも別れる必要なんてないとは思う、でももう仕方ない。それ以外考えられなくなってしまったから。


「うん。そうだね、別れる必要なんてないと私でも思うよ。涼太くんと同じくらいに素晴らしい人なんて私、少ししか知らないもん」
「じゃあ、そのナマエが少しだけ知ってる…オレ以上に素晴らしい人と付き合うんスか」
「ううん、違うよ?私はもう誰とも付き合わない。それじゃ、バイバイ黄瀬くん」


これで私は初めて君をフった女の子として、彼の記憶に存在し続けるだろう。また、私の中にも永遠に愛しい人として、彼が存在し続ける。これも、ある意味二人だけの永遠じゃない?


2人だけの永遠
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -