「んーーーーーっ、ふえっ!?」
一日の授業がやっと終わって、そのまま自分の席で大きく伸びをする。ぎゅうっと閉じていた目を開くと目の前に赤司くんが立っていて、思わず変な声が出てしまった。
「ミョウジさん、悪いんだけど歴史のノート、貸してもらえないかな」
「…何で、ですか?」
変な声については何も触れずに、自分の要件のみを伝えてくる。ある意味ありがたいけれど恥ずかしい。彼が私にノートを借りようとしたのは多分私の学級順位がいつも彼のすぐ下の2位だからだろう。けれど、普段真面目な彼がノートを取り逃した、なんてことあり得るはずがないのでなぜ、ノートを借してくれ、と言ってきたのかが解らない。
「この間の全中の時、バスケ部は公欠でいなかっただろ?その分、だよ」
「あ、なんだ。いつも真面目な赤司くんが珍しく寝たのかと思った」
「この俺に限ってそんなことない、ってわかって言ってるんだろ?」
「嫌な人、だね」
「ミョウジさんこそ」
にっこりと、私たちが交わす言葉に棘があるのはきっと気のせいではない。お互い口には出さないけれど、勉強に関してはライバルである。
「はい、歴史苦手な私のノートが悪くて、次のテストが悪くなっても恨まないでね?」
「あぁ、大丈夫だよ。そんなこと間違ってもありえないから」
「…返すの、いつになりそう?」
「今、写してから部活に行くから、今日中には返すよ」
「そう。私部活あるから、机の中にでも入れておいて」
「わかった。それじゃあ、部活頑張って」
**********
「…何、この付箋」
部活も終わり、明かりの消えた自分の教室で私は貸したノートに、青、緑、黄色と謎の付箋がびっしりと貼ってあることに気付く。私はノートに付箋を貼る勉強法は取っていないため、この付箋が自分のものではないことは明らかで、そのページを開いてみると、青いペンで間違いだったり、補足だったりがされていた。
順々にその赤司くんからの、ありがたい、訂正をひとつひとつ読んでいく。解りやすい説明に、自分だけが一方的にライバル視しているだけで、やっぱり天と地ほどの差がそこにはあるんだなぁ、と空しくなる。
先程までの付箋と違って、最後の付箋は赤色だった。指を掛けてその貼ってあるページを開き、私は思わず目を見開く。
「好きだ」
そう一言だけその付箋の下にこれまた赤い、彼を嫌でも思い起こさせるペンで書いてあった。間違いが指摘してあるのだろう、と思い開いたその最後のページに予想外の告白。その時パチリ、と音がして暗かった私の周囲が一瞬にして明るくなる。
「あ、赤司くん…」
「電気もつけないで何、してたの?」
「なっ…何にもしてないよ。ただノート取りに来ただけだから電気、つけなかっただけ」
「…ふぅん?」
彼は意地悪そうに笑った。私は急いでカバンにノートをしまい、彼の横を通り教室を出る。きっと今の私の顔は真っ赤だろう、彼にもばれたに違いない。急いで帰ろう、と思い歩みを早くすると、後ろから手を引かれた。
「ナマエ、明日からよろしくね」
返事何て聞かなくてもわかっている、と言う風に真っ直ぐに私の眼を見据えて微笑む彼に、私の顔は更に赤くなったことだろう。
きっかけは一冊のノート
title:あまったるい
------------黄昏様に提出
2012/10/24
一日の授業がやっと終わって、そのまま自分の席で大きく伸びをする。ぎゅうっと閉じていた目を開くと目の前に赤司くんが立っていて、思わず変な声が出てしまった。
「ミョウジさん、悪いんだけど歴史のノート、貸してもらえないかな」
「…何で、ですか?」
変な声については何も触れずに、自分の要件のみを伝えてくる。ある意味ありがたいけれど恥ずかしい。彼が私にノートを借りようとしたのは多分私の学級順位がいつも彼のすぐ下の2位だからだろう。けれど、普段真面目な彼がノートを取り逃した、なんてことあり得るはずがないのでなぜ、ノートを借してくれ、と言ってきたのかが解らない。
「この間の全中の時、バスケ部は公欠でいなかっただろ?その分、だよ」
「あ、なんだ。いつも真面目な赤司くんが珍しく寝たのかと思った」
「この俺に限ってそんなことない、ってわかって言ってるんだろ?」
「嫌な人、だね」
「ミョウジさんこそ」
にっこりと、私たちが交わす言葉に棘があるのはきっと気のせいではない。お互い口には出さないけれど、勉強に関してはライバルである。
「はい、歴史苦手な私のノートが悪くて、次のテストが悪くなっても恨まないでね?」
「あぁ、大丈夫だよ。そんなこと間違ってもありえないから」
「…返すの、いつになりそう?」
「今、写してから部活に行くから、今日中には返すよ」
「そう。私部活あるから、机の中にでも入れておいて」
「わかった。それじゃあ、部活頑張って」
**********
「…何、この付箋」
部活も終わり、明かりの消えた自分の教室で私は貸したノートに、青、緑、黄色と謎の付箋がびっしりと貼ってあることに気付く。私はノートに付箋を貼る勉強法は取っていないため、この付箋が自分のものではないことは明らかで、そのページを開いてみると、青いペンで間違いだったり、補足だったりがされていた。
順々にその赤司くんからの、ありがたい、訂正をひとつひとつ読んでいく。解りやすい説明に、自分だけが一方的にライバル視しているだけで、やっぱり天と地ほどの差がそこにはあるんだなぁ、と空しくなる。
先程までの付箋と違って、最後の付箋は赤色だった。指を掛けてその貼ってあるページを開き、私は思わず目を見開く。
「好きだ」
そう一言だけその付箋の下にこれまた赤い、彼を嫌でも思い起こさせるペンで書いてあった。間違いが指摘してあるのだろう、と思い開いたその最後のページに予想外の告白。その時パチリ、と音がして暗かった私の周囲が一瞬にして明るくなる。
「あ、赤司くん…」
「電気もつけないで何、してたの?」
「なっ…何にもしてないよ。ただノート取りに来ただけだから電気、つけなかっただけ」
「…ふぅん?」
彼は意地悪そうに笑った。私は急いでカバンにノートをしまい、彼の横を通り教室を出る。きっと今の私の顔は真っ赤だろう、彼にもばれたに違いない。急いで帰ろう、と思い歩みを早くすると、後ろから手を引かれた。
「ナマエ、明日からよろしくね」
返事何て聞かなくてもわかっている、と言う風に真っ直ぐに私の眼を見据えて微笑む彼に、私の顔は更に赤くなったことだろう。
きっかけは一冊のノート
title:あまったるい
------------黄昏様に提出
2012/10/24