俺と名前は愛し合っていた。
そう―俺たちが新選組にいた、前世では。
俺は名前が本当に大好きで、愛していて…
「来世でも一緒になろう」と、冗談混じりで言ったこともあった。
だけど…そんな上手い話があるわけなかった。
今、名前は、俺のものではなかった。

「あ、斎藤くんだ」
名前とは、就職した会社で再会した。
偶然にも同じ年で、部署も一緒だったのだ。
一目見て、名前だと分かった。
すごく嬉しかった。
ずっと探していた、愛する人。
しかし、名前は―
『えっ、誰ですか…?』
前世の記憶―俺と過ごした日々の記憶は持っていなかったのだ。

気付いてくれなくてもいい。
名前がいて、俺と喋って。
それだけで、幸せだったのに。
「名前、」
「そうだ斎藤くん、私ね、」
俺に幸せは巡ってこなかった。

「結婚することになったんだ」

名前は嬉しそうにニコニコと笑っていた。
結婚…だと?
名前が、俺以外のやつと?
「そんなの、」
だめだ、と言おうとするも。
名前があまり幸せそうに笑うから、
「…おめでとう」
そうとしか、言えなかった。

「式はまだだけど、よかったら来てね」
そう言うと、名前は弾んだ足取りで自分のデスクに戻って行った。
名前に彼氏がいたことすら、知らなかった。
いつかまた俺のもとに戻ってきてくれると、信じていた。
また、「好きだよ、一くん」と囁いてくれると。
だけど、違った。
彼女はもう違う道を歩んでいるのだ。

この俺の思いは、
もう届かない

「せめて、幸せになってくれ」
俺がそう呟くと、瞳の奥に浅葱色の羽織を着た藍色の髪の男と、男装をした少女が見えた。
2人は一緒に歩いていたのに途中で離れ、消えてしまった。





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