「はじめくん、起きてー!!」

ある寒い日の朝。
私は、必死に寝室にあるベットを揺らしていた。
「…なんだ…?」
ベッドの上には布団の塊。
その塊から微かに聞こえる声はいつもより不機嫌だ。
理由はひとつ。昨日の夜、彼は珍しくお酒を飲んだから。
だが、休日なら構わないが、今日は放っておくにはいかない。

「ただいまの時刻、7時です」

私の声に塊がピクリと動く。そうして、思いきり起き上がった。
「7時!?」
「7時です」
「遅刻ではないか!」
そうして、はねた髪で塊の中身―はじめくんは慌ててベッドから下り、着替えだす。
私は朝食の準備をしておくよ、と言ってリビングへと戻った。


「今日は起こしてくれなかったのか…」
超即急でパンを食べるはじめくんが、若干口をもごもごさせながら言う。
「起こしたよ!はじめくんが起きなかっただけ!」
「む…」
「起きないのが悪いんです。それなら朝ご飯食べないで出ればいいじゃん」
そう言うと、はじめくんが押し黙る。
この人は朝食を食べながら私と喋る時間が好きなのだ。
「そういえば今日、朝から商談が入っているんだったな…間に合うか?」
そう言いながらも、お皿は真っ白。
ちゃんと全部食べてくれたんだ。

私が片付けていると彼はもう洗面所での支度を終えていて、追いかけるようにリビングを出る。
ものの30分でキッチリとスーツや髪を決めたはじめくんは、コートを着てマフラーを付け、ドアを開ける―
というところで、踵を返す。

「今日で3年だな、名前」

おぼえてたんだ、と呟く。
「届を出しに行った日も、寒かったな」
「…忘れてるんだと思ってた」
「忘るわけないだろう。今日は早く帰ってくる」
彼がふっと微笑むと、私もつられて笑顔になる。


「行ってくる」
「行ってらっしゃい!」


The third year anniversary



今日で結婚して3年。
慌ただしい朝も、慣れたもんだ。






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