君の隣には、いつも僕がいた。
生まれたときから一緒で、それこそ高校生まで。
でも君は、
『総ちゃん、私、斎藤くんと付き合うことになったんだ』
段々離れて行っちゃって、
『斎藤 名前になりましたっ』
僕がこの気持ちに気づいた時には、もう隣にはいなかった。
ー彼女の隣にいるのは、もう僕じゃなかった。

「僕は、名前が好きだったのか」
披露宴が終わり、僕は外で空を見つめる。
しかしその視線も、いつの間にか下にいってしまう。
…名前、綺麗だったなあ。
小さい頃から、名前の隣は絶対僕だと信じていた。
結婚するときいても、まだ、心の隅では…
ー今日、名前の隣にいるのは一くん。
2人とも、笑っていて…とても幸せそうで。
ああ、もう僕の隣には名前はいないんだと、思い知らされた。
「…忘れなきゃね」
そう呟き、視線をあげたとき。

「総ちゃーん!」

ウェディングドレス姿の名前が、僕の名前を呼ぶ。
「どこ行ったのかと思ったよ! 早く戻っておいで」
そう微笑む名前は、やっぱり幸せそうで。
(やっぱり…忘れるにはもう少しかかるかも)
そう思うも、さっきより気持ちは軽くなっていた。
ー今までずっと隣にいたのは僕だ。
その思い出は、僕だけのもの。
名前が忘れないでくれれば、それでいい。
「待って、今行くから!」
僕は名前たちに向かって歩き出した。

さよなら、初恋

「うー、あー、うー」
小さな手が僕の指をきゅっと握る。
(君が生まれちゃったから、名前と一くんが別れる確率がまた低くなっちゃったよ)
こんなことを思いつつ。
「…可愛いなあ」
僕の顔は、緩んでいた。
「ふふ、総ちゃんと仲良しだね」
「そうだな」
「うー、そー、ちゃ?」
「「「!!!」」」
僕の、名前?
「あはは! パパより先に呼んじゃったね!」
「そ、そんな…」
「ごめんね、一くん」
でも、君は僕から名前の隣を奪ったんだから、
「これくらい、いいよね?」
僕は微笑むと、2人の子どもを抱きしめた。





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