私には彼氏がいる。
名前は斎藤 一といって、1つ上の先輩だ。
もうすぐ付き合って1年。
順調にいっていると思っていた。
―だけど最近。
はじめ先輩に、私に見せない笑顔があると知った。

今日もはじめ先輩は遠くを見つめている。
「はじめせんぱ、」
話しかけようとして、立ち止まる。
その瞳の先には、私じゃない女の子がいたから。
だけど彼女は、他の男の子を見つめている。
はじめ先輩は、誰にも気づかれないくらい少し、顔を曇らせた。
先輩―
私じゃもう、だめなんですね。

「名前、帰ろう」
「はじめ先輩…」
いつも通りの部活帰り。
「私と、別れて下さい」
私は先輩に別れを告げる。
「は…? なにゆえ、」
「分かってるんです! …はじめ先輩はもう、私を好きじゃないって…」
「………っ、」
はじめ先輩は何か言おうと口を開いて、やめた。
「楽しかったです、先輩と付き合えて…」
「名前、」
「嘘でも好きって言ってくれて」
あなたを好きになれてよかった―
何も言わないはじめ先輩を後に、私は1人、夕暮れの中を歩き始めた。

はじめ先輩が見えなくなって、私は。
「…っ……、う……っ、」
1人で泣いていた。
…悲しくないわけない。
「はじめ先輩…っ」
自分で別れを切り出しておいて…涙が止まらなかった。

だけど、本当は
好きと言って欲しかった

「大好きでした、」
斎藤先輩。
そう呟くと、私は涙を拭って歩き出した。




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