「好きだ」
突然言われた言葉。
「…ごめん…」
その言葉に、私はそう答えていた。
平助は一瞬悲しい顔をして、すぐいつもの顔に戻った。
「大丈夫、分かってたから! これからもいつも通りに接してくれよ!」
―平助が新選組を出て行ったのは、そのすぐ後のことだった。

「…はあ」
平助が出て行って半年以上が経った。
私は…ずっと平助が気になっていた。
今どうしているんだろうとか、
新選組に戻ってくる気はないのか、と…
しかし、そんなときだった。
「平助が…死んだ」
そんなことを聞かされたのは。
「嘘でしょ…?」
そんなはずない、平助が、死ぬなんて…
だけどみんなは冷たく、「平助は死んだんだ」と言った。
私は何度聞かされても、それを信じることができなかった。


「はあ…」
夜になり、俺は―羅刹になって初めて外に出た。
「まさか…俺も、羅刹になるなんてな」
死ぬか生きるか。
その選択肢で俺は…生きることを選んだのだ。
ふらふらと歩いていると、前川邸の方から音がした。
だめだと分かっているけど、どうしても気になって覗いて見る。
そこにいたのは―
「ひっ…く…」
泣いている名前だった。
「―っ」
つい名前を呼びそうになった自分を抑え、茂みに隠れる。
「へい、すけ…っ」
彼女は俺の名前を呼んだ。
「ごめ、今更…好きに…っ」
今更、好きに。
彼女は、俺を想って泣いているのか…?
「…っ」
さすがにまずい、と俺は引き返す。

俺は今でも名前が好きだ。
だけど、もう想いを告げることはできない。
俺と彼女は、
すれ違って想いあう

「ごめん、名前…俺が、」
俺が新選組を抜けてなければ…
その言葉は声にならずにどこかに消えた。





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