斎藤家編・第一話










私には弟がいる。
「姉さん」
名前は斎藤 一、2つ下の高校1年生だ。
「何〜?」
「クッキーを焼いた。 食べてくれ」
「マジで!? 食べる食べる!」
私なんかよりよっぽど女子力が高くて、何でもできるやつ。
「美味しい!」
「そうか、よかった」
よく身の回りの人たちに、「本当は一くんが兄であんたが妹でしょ?」なんて言われる。
…ま、私もそう思うけど。

「はじめはさ、私が妹の方がよかった?」
「…は?」
「だってどう考えてもはじめの方が上っぽいし? 私は姉っぽいことなんかしてやれないし…」
私がクッキーを齧りながら言うと。
「俺はそうは思わないが」
と、はじめが私に顔を近づけた。
「な、はじめ!?」
私は手に持っていたクッキーを落としてしまう。
「あんたは俺の姉さんだ。 俺は姉さんが姉さんだから、好きなんだ…姉さんは馬鹿だな」
私におかまいなく真面目な顔でそんなことを言われてしまう。
「な…う、うるさいっ!」
「うるさいとはなんだ」
「弟のくせにっ!」
「でも、姉さん。 俺が弟で良かっただろう?」
今度は意地悪に微笑むはじめ。
「…よ、」
そんなはじめに私は顔を背け、
「よくないっ!!」
と、叫んだのだった。




「ああ、姉さん。 もちろん彼氏なんぞはいないだろうな?」
「は?」
「いたら…ふっ」
はじめが黒い笑みを浮かべるのを見て、私はこの弟の怖さを改めて知った―






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