ある日、家に帰ると―
「…へっ?」
部屋が、綺麗さっぱりと片付いていました。
部屋が綺麗なのは、いいことだ。
…だが。
「わ、私の総司くんグッズが無いっ!!」
宝物が、無くなっている。
これは絶対、
「薫…!」
あの弟の仕業だ。
「薫っ!!」
勢いよく薫の部屋に入ると、そこにはスッキリとした笑顔を浮かべる薫がいた。
「何?姉さん」
「あ、あんた…私の総司くんグッズ捨てたでしょ…!!」
「うん」
返事早っ!!
「なんでそんなことするのよ…が、頑張って集めたのに、ひどい…!」
お金だって馬鹿にならないのに!!
私は力任せに叫ぶ。
「…姉さんこそさ、」
すると薫は私の顎に手をかけ、
「こんなに可愛い弟の俺がいるのにアイドルなんかに夢中になっちゃって。…それこそ、酷いよね?」
クイッと顔を近づける。
可愛い、弟?
「…そんなの、どこにいるのよ…」
「ん?」
「薫なんて、大っ嫌い!!」
私は薫の手を振り払うと、部屋を飛び出した。
「…俺だって、大嫌いだよ」
あいつなんかに夢中になってる姉さんが、ね。
―すでに部屋のベッドにダイブしていた私には、そんな薫の呟きなんて聞こえるはずもなかった。
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