名前は逃げないようにと彼女と手を繋ぎ、僕らは2人の前を歩く。
…めんどくさいことになっちゃったなあ、なんて思いつつ。
「…しょうがないだろう。 悪いのは、脱走したあいつらだ…」
呆れたような顔で僕を見つつ、一くんが言う。
「ちょっと、人の心読まないでよ。 …まあ、そうなんだけどね」
まさか、羅刹を見られちゃうなんて…
「名前のせいだからね、」
「…総司。 名前は悪くないだろう」
後ろにいる名前に聞こえない程度に呟くと、一くんが僕を睨む。
「はいはい。 一くんはすぐ名前の肩を持つんだから」
「なっ、そんなことはない!」
あーあー、顔が赤いんですけど。
「何話してるの?」
そこに、いつも通りニコニコしている名前が割って入る。
「あ、手痛くない? 大丈夫?」
「あっ、だ、大丈夫です!」
彼女は名前と顔をあわせては赤くなっていた。
これは…惚れたな。
「…総司、」
「大丈夫。 名前だって分かってるから」
―この後彼女がどうなるか、なんて。

もう何かに勘づいていた土方さんは、僕らが屯所に戻るとすぐに幹部を集めた。
「羅刹を見られただと!?」
一くんが報告すると、土方さんは眉を顰める。
「まずいな…あいつら、あんな方にまで脱走してやがったか…」
結構遠くに行ってたよなあ…確かに、人に危害を与え始めてしまったらまずい。
ただ見られただけで…相当まずいんだから。
「それで…羅刹を見たやつはどうした」
「名前の部屋におります」
「…早殺しちゃいましょうよ」
僕がニコリと笑って言うと、土方さんは更に眉を顰めた後、ため息をついた。
「斎藤、名前とそいつを呼んで来い。 …話だけは聞いてやろう」
一くんは頷くと広間を出て行く。
さあ、どうなるのかな。
…優しく殺してあげようか、いっそ思いっきり殺してやろうか。
僕はぼんやりとそんなことを考えていた。

「はいはい連れてきたよー」
一くんと名前に続いて入ってきたのは浮かない顔をした彼女。
「失礼、します…」
ああ、なんとなく分かってるんだろうなあ。
…見てはいけないものを見ちゃった、って。
「…お前は羅刹を見たんだな?」
土方さんが思いっきり睨むと、彼女はびくりと体を震わせる。
「…みま、した」
「そうか。 なら、問答無用で―」
斬る、そう言おうとしたのだろう。
「待って下さい」
だが。
「判断は…彼女に名前を聞いてからにしませんか?」
名前がニコリと笑って口をはさんだ。
「…名前だぁ?」
「はい。 きっと驚きますよ」
「意味が分かんねえが…じゃあお前、名前を教えろ」
「えっ、あ、はい…私は雪村 千鶴といいます、」
雪村―
「…雪村だと?」
土方さんの顔つきが変わる。
「まさか…」
「そのまさかです。 彼女、綱道さんの娘さんですよ」
やっぱり。
「綱道さんの娘か…」
そう、彼女は


探者の娘


あーあ、これは殺せる確率が低くなっちゃったな。
そんなことを思いつつ、僕は彼女を見つめていた。



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