「ああ、よかったあ…」
朝餉後。
部屋に帰ってきた私は、ホッとため息をついた。
私は、土方さんに「飯はここで食べてもいい」と許可をいただいた。
誰かと一緒なら部屋から出てもいいって言われたし…本当に良かった!
「苗字さんのおかげ…だよね」
―ふと、思った。
最初に助けにきてくれたのも苗字さんだし、色々としてくれているのも苗字さんだ。
「なんで…ここまでしてくれるんだろう…」
私は、新選組にとって「邪魔な存在」なのに…
考えていると、不意に襖が開く。
「失礼する」
「斎藤さん!」
そこには斎藤さんがいた。
「な、何か用でしょうか…?」
「…来い」
「えっ?」
「屯所を案内しろ、と#name2に言われた。 ついてこい」
それだけ言うと、斎藤さんは歩き出す。
「あっ、ま、待ってください…!!」
私はそれを追いかけた。

「ここは調理場だ。 これからお前にも食事当番が回ってくるだろう」
「分かりました!」
調理場に続いて各部屋も案内してもらい、次に来たのは。
「ここは稽古場だ」
「わあ…」
皆さんはここで稽古してるんだ…
「…このくらいだろうか。 他に知りたいことはあるか?」
「大丈夫です! ありがとうございます!」
「礼には及ばん」
斎藤さんと別れ、部屋に帰ろうと廊下を歩いていたそのとき。
『話って何? トシ』
土方さんの部屋から、苗字さんの声がした。
思わず、立ち止まってしまう。
…聞いちゃいけない、って分かってるのに。
『何って…分かってるだろうが』
『うん。 千鶴ちゃんのことでしょ?』
え、私のこと…?
『ああ、そうだ。 …あいつに、お前のことがバレるのはまずい』
『…そうだね。 でも、バレるのも時間の問題だと思うよ?』
バレる…? バレるって、何が…?
『名前、肝に命じておけ』
私の胸が高鳴る中、土方さんは言った。

『お前は―女だ』

―え?
『どんだけ心配してんの?』
『お前は小せえ頃から無茶ばっかしやがるからな』
『…トシが小さい頃の話するなんて珍しいね』
『うるせぇ』
ちょっと待って、頭が混乱してる。
苗字さんが女?
ということは…男装?
『じゃあそろそろ巡察だから』
『ああ。 気をつけろよ』
あ―どうしよう、苗字さんが出てきちゃう!
で、でもここから私の部屋は遠いし…!
「分かってるってば、」
ワタワタしていると、スッと襖が開きー
「…千鶴ちゃん?」
苗字さんと、目があってしまった。
「まさか…今の話、聞いてた?」
「え…えっと、あの…その、」
「聞いてたんだね」
苗字さんはため息をつく。
「ごめんなさい、私っ…」
「…まさかこんなにすぐバレちゃうなんてなあ」
…ってことは。
「苗字さんは…女性なんですか?」
私が聞くと苗字さんは、
「…うん、そうだよ。 私、本当は女なんだ」
と、いつも通りに微笑んだ。


彼は彼女


衝撃の事実に、私はただただ驚くだけ。
まさか、苗字さんが女だったなんて―






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