千鶴ちゃんが新選組で生活を始めて一週間が経った。
「情報は一切無しだってさ。 よかったね♪」
「よ、よくないです!」
今日の見張り当番は僕。
とりあえず報告ということで、部屋に入ってみた。
「僕としてはいいんだけど」
「…え?」
「もしかしたら殺せる確率が増えるかもだからね」
僕がニコリと笑って言うと、
「………」
と、千鶴ちゃんは顔を真っ青にして黙ってしまった。
「嘘だってば」
「…沖田さんの嘘は嘘じゃない気がします…」
「…ん?」
「ご、ごめんなさいっ!」
たった一週間で言うようになったなあ、この子。
「…面白いね」
ふと僕はそう呟いていた。
「…?」
その小さな呟きは聞こえなかったようで、千鶴ちゃんは首を傾げている。
「何でもないよ」
「そ、そうですか…」
―この子に興味が出てきたよ。


名前と共に雪村の部屋に向かっていると、襖の向こうから聞こえるのは話し声だった。
「総司の声…だな」
「随分楽しそうに喋ってるね」
名前の言うとおり、その声色は少しばかり楽しそうだった。
「総司、交代の時間だよ」
名前が襖を開けると、そこでは総司と雪村が向かい合って話していた。
「あれ? もうそんな時間?」
「あはは、時間も忘れるくらい楽しかった、とか?」
「…そうかもね」
「「「…え」」」
「嘘だよ。 三人ともそんなに驚かないでよ」
…冗談とはいえ、総司がそんなことを言うなど…
「千鶴ちゃん、大丈夫?」
「総司に何かされなかったか」
「ちょっと。 酷くない?」
「だ、大丈夫です…ありがとうございます、苗字さん、斎藤さん…」
雪村の顔が赤いが…やはり何かされたのだろうか?
「じゃあ交代ね」
「総司は早く出ていけ」
「君たちは何なのさ。 そんなに僕が邪魔?」
「まあ」「ああ」
「………………」
「お、お二人ともっ! 沖田さんの顔が大変ですっ!」
雪村も言うようになったな。
名前と顔を合わせて少し笑っていると総司が、
「…そんなに僕をのけ者にしたいわけ?」
と、拗ねたような顔をして言った。
「「………………」」
本当に、今日の総司はどうしたんだろうか。
「…のけ者とかじゃなくてさ、一番組は今から巡察でしょ?」
「あれ? そうだっけ」
「忘れたらまた土方さんに怒られるよ」
「あー…うん、じゃあ行ってくる」
「うん」
総司は立ち上がって襖に手をかけると振り返り、
「またね。 千鶴ちゃん」
と、微笑んだ。

「……………」
「総司…」
俺も名前も、呆気にとられていた。
「あの、苗字さん、斎藤さん…?」
雪村はそんな俺らを見て、不思議そうな顔をしている。
「…何でもない」
「じゃあ外にいるから。 何かあったら呼んでね?」
「は、はい!」
そうして部屋の外に出ると、名前がしゃがみ込む。
「あれってさ…そういうこと、だよね、」
膝に顔をうずめる名前。
「総司が…か」
「…私、…」
名前は何か言いかけると、いきなり立ち上がる。
「なんて、ね! さあさあ仕事するよ!」
その笑顔は、いつもの名前のものだった。
だが。


笑顔の裏に


何かがある。
名前をずっと見てきた俺には、分かってしまった。






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