「大変なことになっちゃったねえ」
と、隣で名前が笑う。
「…ああ」
俺はそう応えつつ、色々なことを考えていた。
すると名前は土方さんに向き直って言う。
「で、土方さん。 千鶴ちゃんのこと、どうするんです?」
……………ちゃん?
「え…っ、私のこと、女だって気づいて…!」
「気づいてるよ、みんな」
おん…な?
「!?」
「一くんは気づいてなかったみたいだけど」
「おおおおお、女ぁ!?」
「あ、平助もか」
ま、まさか…雪村が女だったとは…
「散々娘って言ってたのに」
「き、気づかなかった…」
「斎藤は鈍感だからな」
「ふ、副長は気づいて…?」
「ああ、最初からな」
…な、なんという不覚…
「…で、だ」
土方さんが一つ咳をすると、一瞬で空気が変わる。
「綱道さんが見つかるまで…こいつを新選組に置こうと思う」
それは恐らく、近藤さんと話し合った結果であろう。
「意義はないな?」
「綱道さんの娘となりゃあしょうがないよね。 あーあ、殺せなくて残念だなあ」
「…総司」
こいつの本心は掴めない。
「嘘だって。 睨まないでよ、一くん」
…睨んでるつもりはないのだが。
「雪村の部屋は名前の隣とする。
…いいな?」
「はい」
―こうして。
雪村は新選組に置かれることとなった。

「まずは自己紹介でもしようか? 一応一緒に住むわけだし」
名前の提案により、俺たちは雪村に自己紹介することとなった。
「局長の近藤 勇だ。 よろしくな、雪村くん」
「副長の土方だ」
「総長の山南です。 よろしくお願いしますね」
「は、はい!」
重鎮である三人に、雪村は少し緊張しているようだった。
「僕は一番組組長の沖田 総司。 …少しでも何かしたら、斬るからね」
「おいおい総司…十番組組長の原田 左之助だ。 よろしくな」
「俺は八番組組長の藤堂 平助! 気軽に平助って呼べよ!」
「俺ぁ二番組組長の永倉 新八だ。 可愛い子が入って嬉しいぜ!」
「よ、よろしくお願いします…!」
そうして残りは俺と名前だけになった。
「…三番組組長の斎藤だ」
「三番組参謀の苗字 名前。 よろしくね、千鶴ちゃん」
無表情の俺とは真逆に、名前はニコリと微笑んでいる。
「はっ、はい…! よろしくお願いします!」
彼女は俺たちに礼をする。
―その顔は仄かに赤かった。

その日の夜。
「外出どころか部屋を出るのもダメだってさ。 厳しいねえ」
縁側に座っていると、後ろから名前がやってきて隣に腰掛けた。
「…しょうがないだろう、平隊士に見られてはまずいからな」
「そうだけどね…やっぱり、少しかわいそうだよ」
そうつぶやく名前は、いつもとは違って真面目な顔だった。
「早く綱道さんがみつかればいいんだけど…」
「ああ、そうだな」
俺も名前も口には出さないが、思っていることは同じだろう。
―綱道さんは恐らく、どこかで羅刹の研究をし続けている。
「早く…見つけないとね」
彼女のためにも。
―新選組のためにも。


見つかるまで


どれくらいの年月がかかるかは、わからない。
―それでも、全力を尽くす。
月明かりの下、俺たちはそう誓った。






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