愛の口付け ----------------------------------------------------------------------------- 僕には恋仲がいる。 「トシ、金平糖くれ!」 「ねえよ」 「え!?」 「いつも持ってるわけねえだろ」 「えええ!?」 その恋仲とは、この目の前で落ち込んでいる名前ちゃんだ。 「金平糖…」 ああ、シューンとしている名前ちゃんも可愛いなあ。 …じゃ、なくて。 「ったく…ほらよ」 「え!? 持ってんじゃん馬鹿ト…下さいお願いします!」 「まったくてめえは…ただし、だ」 「ただし?」 「俺のことをトシって呼ぶんじゃない」 「え、なんで!? 歳三なんだからトシでいいじゃん!」 「よくねえよ…俺の命が危ねえんだよ…」 土方さんがチラリと僕を見て焦った顔をしている。 あれ? そんなに顔に出てるかな? …この嫉妬心が。 「ちぇー。 じゃあ土方って呼ぶ」 「それでも呼び捨てかよ…」 そう言いつつ土方さんは名前ちゃんに金平糖を手渡す。 「ひょー! ありがと、トシ!」 「「え」」 僕まで思わず声を出してしまった。 「あ、沖田! いたの?(ポリポリ)」 いたの、って。 愛する恋仲に向かっていたの、って。 「ずっといたよ?」 「そうなの? あ、ねえねえ、トシに金平糖もらったの!(ポリポリ)」 そもそもさあ。 なんで僕は『沖田』って苗字呼びで、土方さんは名前呼び? 名前ちゃんって、 「土方さんが好きなの?」 「…はっ?(ガリッ) …あれ? もしかして…声に出てた? 「え、ちょ、おき」 「僕のこと、名前で呼んでよ」 溜めこんでいた思いは留まることはない。 どうしちゃったんだろう、僕。 「え!? そ、それは、」 口ごもる名前ちゃん。 「…もういいや」 何故か僕はイライラしてしまい、2人の前を後にした。 「あー…もう…」 やんなっちゃうなあ。 僕はこんなに君のことが好きなのに、両想いのはずなのに。 「名前ちゃんって、ほんとに僕のこと好きなのかなあ…」 もう僕なんかじゃなくて、土方さんが好きなのかなあ… …あ、まずい、殺意しか湧いてこない。 「やだなあ…」 名前ちゃんが他の人のものになってしまうのは、絶対に。 → Back |