この間の日曜日に、土方先生に助けてもらった。
その日から、何故か私は―
「はあ…」
土方先生のことが気になっている。

「ため息なんかついてどうしたの?」
「何かあったのか?」
「総司、一くん…」
同じクラスでよく行動を共にしている2人が心配してくれているようだ。
「いや、なんていうか…」
「何でも言ってよ?」
「力になれるか分からんが…」
「2人とも…!」
私はなんていい友達を持ったんだろう!
そんな2人を裏切れるはずもなく、私は言う事にする。

「なんていうか…気になってる人がいて」
「「!?」」
私が言うと、2人はフラッとして机に手をついた。
「…嘘でしょ?」
「ま、まさか男か…!?」
…いや、女だったら逆にちょっと…
「誰!?」
「俺たちの知っているやつか!?」
「知ってる…っていうかめちゃくちゃ仲良いと思う」
…あ、総司は仲良いのか仲良くないのか分かんないけど。
2人は真剣な目で私を見つめ、言った。
「もういいから言ってよ!」
「お願いだから言ってくれ!」
え、ええ!?
しょうがない! と私は腹をくくって言った。

「…ひ、土方先生…」
―私は生涯、この時の2人の表情を忘れないだろう。


昼休み。
飯を食っていたところ、バンッという大きな音を出して職員室のドアが開いた。
振り向いてみると、そこには総司と斎藤がいた。
「どうした、総司、さいと…」
俺はそう言おうとして、言葉を止めた。
「殺していいですか?」
「すみません、これだけは許せません」
2人が、すごい殺気を放っていたから。

「…は?」
「これまでは我慢してきましたが、今回だけは無理です」
総司はニコリと黒い笑みを浮かべ。
「これだけは…許せないんです」
斎藤までもが俺に殺気を放っていた。
「俺がなにしたってんだよ!?」
「それは…ねえ」
「ああ」
「説明しろよ!」
俺が叫ぶと、2人はしぶしぶと持っていたハサミと教科書をおろした。
ハサミって…総司は本気で俺を殺す気か!?
他の先生らがジロジロ見ていたため職員室を出て、俺たちは屋上に行くことにした。

「…で?」
「土方さんを殺します」
「ばれぬように、完全犯罪で」
「やめろ!」
なんかこの2人が組んだら出来てしまいそうで怖い…!
「いいから、説明しろってんだよ」
「…しょうがないですね」
「悪く思うなよ、名前」
名前…?
「「名前が土方さんのことを気になってるんだそうです」」
名前、って…
「苗字かあ!?」
「そうです」
「何か心当たりが?」
心当たり、と言われると…
―日曜日。
「あれ? その顔はもしかして…心当たりが?」
「…あるちゃあ、ある」
「そうですか」
「斎藤、無言で教科書を構えるな」
あの斎藤がこんなになっちまうなんて…恐ろしい奴だ、苗字!

「…土方さん」
総司がハサミを構えながらも、真面目な顔で言う。
「あなたは教師なんですから、名前に手を出したりしませんよね?」
そうだよ。
俺は教師で、あいつは生徒だ。
1番手を出しちゃあいけないやつだろう。
―なのに。
「それは分かんねえなあ」
そう答えてしまったのは何故なのか、自分でも分からなかった。




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