そして3年が経った、ある日の日曜日―
「…新八」
「な、なんだ?」
「どういうことだ」
「さ、さあ―」
「いいから答えろっ!」
「ひいっ!」
俺はまた、あの店にいた。
「てめえ…まさかまた合コンか…!?」
「あ、あはははは…いいじゃねえか土方さ、」
「よくねえ!」
俺は勢いよく立ちあがる。
「頼む土方さん! お願いだ!」
「無理だっつってんだろ! 俺は帰る!」
「土方さああああん!」
叫ぶ新八と諦めている左之を後にし、俺は店を出た。

ったく、新八の野郎はまた…!
カツカツと靴を鳴らして歩いていると、あることを思い出して立ち止まる。
「これ…前と同じじゃねえか」
3年前―
名前と出会ったときと。
怒って店を出た後に、あいつがナンパされてて。
んで助けて、なんだかんだで。
「…で、行っちまったと」
この3年間、名前とは一度も会っていない。
電話とメールはたまにするが、あいつと会うことは一度もなかった。
「…今年で3年じゃねえか」
誕生日は知らないが、もうあいつも20歳になっただろう。
なら、帰ってくるんじゃないのか?
俺は、3年間待った。
一度たりともあいつを忘れたことなんてなかった。
…でも、あいつは。
もしかしたら、もう俺を忘れてしまったかもしれない。
あっちの居心地がよくて、もう戻ってこないかもしれない―
「…アホらし」
もう帰ろうと、立ち上がったそのとき。
「やめてください!」
その声が響いた。

前とあまりにも同じパターンに、俺は思わず振り返る。
すると、そこにいたのは―
「暇じゃないんです!」
長い髪の女だった。
俺は歩き出し、彼女の前に出た。
「…俺の連れだ」
言いながら睨みつけると男たちは足早に去って行った。
すると後ろ姿だった彼女は振り向き、俺をまっすぐに見た。
「あの、ありがとうございました」
その姿は―
「…名前…?」
俺がずっと待っていたあいつだった。

「土方先生…」
「お前、どうしてここに…」
「…戻ってきたんです」
「ならお前、どうして連絡―」
俺が言いかけると、名前はぎゅっと抱きついてきた。
「…いきなり行って驚かせようと思ったんです」
「行くって…どこにだよ」
「学校?」
「馬鹿かお前は…今日は日曜で仕事は休みだ」
「え」
外国で暮らして曜日も分からなくなったか。

「もー…またナンパされたし…」
「そうだな」
「でも、ナンパのおかげで前も今も先生と会えたよね」
そう言いニコニコと笑っている名前に、俺は抱きしめる力を強めた。
「おかえり、名前」
「…ただいま、先生」
3年間待っててくれてありがとうございます―
そう言って微笑む名前に、俺はキスをした。


「おい、名前」
「ひゃ…な、何」
「何ぼーっとしてんだよ」
「ちょっとナンパされてた…」
「は? お前頭大丈夫か?」
「違うよバカ! 先生と会ったときのナンパを思い出してたの!」
「ああ、それか…つうか先生じゃねえだろ」
「え、あ、えーっと………あなた?」
「それもなんか違くねえか? 奥さん」
「そっちの方が変だよ! てゆうか今から結婚式なんだからまだ夫婦じゃないでしょ!」
「知らねえよ…」
「ちょ! 適当!」
「お前が細けえんだろ」
「だってまさかさあ…結婚するだなんて思わないじゃない」
「いや? 俺はお前が帰ってきたらすぐにでも言おうと思ってたけど」
「そのわりに遅かったね」
「……それはだな」
「まあいいや! 私、先生…じゃなくてトシと結婚出来て嬉しいよ!」
「…俺もだ」

C'était bon de vous rencontrer.
「愛してるよ、トシ」
「愛してる、名前」
あなたと出会えてよかった。


END




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