「…ごめん」
いつもの総司なら、「嘘だよ」って笑ってくれる。
けど、今の総司は―
「僕、この家を出て行こうと思ってる」
ニコリとも笑わない、真面目な顔。
「名前ちゃんとは、一緒にいられなくなる…」
本気だから。
本当に、北海道に行こうとしているから。


それからなんとなく話しづらくなってしまい、私は総司の部屋を後にした。
ご飯を食べる気にもなれなくて、部屋に籠る。
総司…ほんとに出て行っちゃうんだ。
時々しか会えなくなっちゃうし、なにより、
―もう一緒に暮らせないんだ。
「…っ」
前に聞いてきたのはただ思ったからなんかじゃなくて、
まだちゃんと決めていなかったからだったんだ。
そう考えていると、ドアがノックされる。
「…名前、」
一くんだ。
「ご飯、どうする」
「ごめん、今日は…いらない」
「そうか…もし腹が減ったら下りて来い。 何か作ってやる」
「一くん…ありがとう」
一くんの優しさが、私の気持ちを少し軽くしてくれた。


寂しいのは私だけじゃない。
1番さびしいのは、総司だ。
だから―
私は総司を、笑顔で送り出さなきゃいけないんだ。


次の日、私は総司の部屋を訪ねて来ていた。
「総司、私―」
寂しいけど、総司が決めたことだから。
「この家に総司がいなくなっちゃうのは嫌だけど、」
また帰ってきてくれるでしょ?
そう言うと総司は微笑んで、
「うん。 絶対にこの家に帰ってくるから、」
待っててくれる?
「うん!」
私は総司に抱きしめられつつ、そう笑顔で頷いた。


「というかさー、まだ出ていくとは決まってないんだよね」
「…は?」
「落ちちゃったら、ね。 薄桜大学に行くから」
「…早く受からないかなー」
「それ、どういう意味?」
「なんでもない!」
あと3カ月近く。
2人で思いっきり楽しもう!


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