「あ、来た」
「きょ、今日はお日柄もよく…」
「何言ってんの? 頭大丈夫?」
「だ、だって緊張しちゃって…」
私が言うと、総司はぷっと笑う。
「緊張しなくても大丈夫だよ。 ―ああ、あと」
「?」
「今日の名前ちゃん、可愛いよ」
「…っ! 総司!」
「あはは! ほら、行くよ!」
総司は私の手を握って歩き出す。
―今日は、ドキドキの初デートです!


「どこ行くの?」
「んー、どこ行きたい?」
行きたいところ…
「あ、本屋! 料理の本買いたい!」
「本屋ね、了解」
そうして総司に連れられてきたのは大きな本屋。
「初めて来た!」
「そうなの? 僕何回か来たけど結構良かったよ」
「じゃあ私でも美味しく作れる料理の本があるはず!」
「ああ、それは無かったよ」
「ええ!?」
冗談はさておき、と端から順番に本を見ていく。
料理の本や漫画、雑誌などを見終わると、時刻は11時半。
「『私にもできる! 料理の本!』買っちゃった!」
「なんかうさんくさい名前だよね」
「そんなことない!」
そうして私たちは本屋を後にした。


「じゃあそろそろご飯にしようか」
「うん! お腹減った!」
「何食べる? パパイヤ?」
「なぜ!?」
突然総司が分からなくなったぞ…!
「嘘だって。 名前ちゃん、何食べたい?」
「嘘で良かった! んーと……牛丼とか?」
「ぶはっ」
総司が吹き出す。
「牛丼…って…!」
思いっきり笑っている。
あ…女子として牛丼はありえなかったか…!
「え、えっと、」
「いいよ、牛丼。 僕も好きだし」
「…なんかごめん」
「なんで? 別にいいじゃん」
…さ、さすが総司…!
感動しつつ、私たちは近くの牛丼屋に入る。
「やっぱ牛丼って美味しいよね!」
「そうだね、周りおじさんしかいないけど」
「だからごめんってば!」
「嘘だって。 無理して別なもの食べるよりいいじゃない」
総司はこう言ってくれるけど…
可愛い女の子なら、パスタとかオムライスとかオシャレなのを選ぶんだろうなあ…
そう思いつつ、私は牛丼を食べきった。


「じゃあそろそろ帰ろうか?」
時計の針は4時を指している。
牛丼屋を出た後は雑貨屋やジェラート屋さんなど、色々なお店に行った。
もう終わっちゃったのかあ…
少し名残惜しいと思っていると、総司が顔を覗きこんでくる。
「寂しいの?」
「…ぜ、全然! 普通ならここでお別れだけど私たちは家も一緒だもん!」
うん、家で会えるしね!
そう思うと一緒に住んでるってすごいよね!
私が言うと、
「…ねえ、名前ちゃん」
総司は微笑んで、


「僕がいなくなったら、寂しい?」


そう言った。
「…何? 急にどうしたの?」
「ううん、ちょっと思ったから」
「…総司がいなくなったら、」
そんなの…
「寂しい…かも」
「かも? かもなの?」
「かも」
私が言うと総司は
「そっか」
と言って笑った。


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