それは、私が高校に入学する前の春のことでした。
「へっ…転勤!?」
両親に告げられたのは、思いもよらない言葉だった。
「そうなのよ、お父さんがねえ…」
「やだよ! せっかく高校受かったのに引っ越しなんて!」
「だからってなあ…」
お父さんがうーん、と悩んでいる。


するとお母さんがパッと閃いたようにソファから立った。
「―近藤さんに頼んでみてはどうかしら?」
…近藤さん?
「ああ、それはいいかもしれないな。 あそこの家は子供がいないしもしかしたら…」
「ちょ、ちょっと待ってよ、近藤さんって誰!?」
「「薄桜学園の学園長(よ)」」
ええ!?
次の日、私たちは近藤さんに会いに行くことになった。

「全然良いぞ!」
…早っ。
「本当ですか? よかったわね、名前」
「ああ、近藤さんの家なら安心だな」
「では春からよろしくな、名前!」
「…よ、よろしくお願いします!」
―そうして。
私は、近藤さんの家に下宿させてもらうことになったのだ。


そして、その1週間後。
「…うわあ、やっぱり大きな家…」
私の下宿生活がスタートしようとしていた。
他の家で生活なんて、ドキドキするけど少し楽しみだな。
そう思いつつ、玄関のチャイムを押しながら待っていると―
「…はい」
出てきたのは、藍色の髪の―男子だった。
これまたイケメンな…
イケメン、な………
「…えっ?」
「…何か用か?」
うわ、いきなり「何か用か」って言われた。
「いえ、あの…私、今日からここに下宿する苗字ですが…」
私がそう言うと、彼は―
「っ!?」
ものすごくびっくりした顔をしていた。
…無表情の人かと思ったけど、意外と表情あるみたい。
しかしまた無表情に戻り、私に「入れ」と言った。
………えっと。
どういうことなんだろうか…?


とりあえずリビングに入ってみると―
「…えっ?」
男の人が―5人、いた。
…えっ、どういうこと?
「一くん、誰それ?」
1番に口を開いたのは茶髪に翡翠色の目の男の人。
「総司…近藤さんを呼んできてくれ」
一くんと呼ばれた藍色の髪の男子が言うと、総司と呼ばれた男子は「おっけー」と出て行った。


「「どういうことですか」」
近藤さんがリビングに来た瞬間、私と一…さんの声が被る。
「どういうことって…名前はうちの新入りだぞ」
「「「「はあ!?」」」」
と、私と茶髪で翡翠色の男子以外が言った。
「…ふーん、やっぱりね」
翡翠だけはそう言っていた。
「そんなわけで、みんな名前をよろしくな!」
「…えっ、どういうことですか」


「こいつたちは名前と同じうちの同居人だ!」


…えっ!?
「ああ、あと俺はこれからほとんど家を空けることになった! 6人で頑張ってくれ!」
「「「「「「えええ!?」」」」」」
仕事があると近藤さんが出て行ったあと、私たちはシーンとしていた。
私―
とんでもない家に来てしまったみたいです。


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