ある日の昼休み。
「あ、あのー…」
「「名前ちゃんは黙ってて」」
「私張本人なんですけど!」
私を挟んで、総司と千鶴が喧嘩していた。
何故かって?
それは10分ほど前のことでした―


「名前ちゃん、お弁当食べよ!」
「あれ? もうお昼?」
「もう、また寝ぼけてる」
いつも通り千鶴と昼ご飯。
机をあわせて、2人でいただきます…のはずだったのだが。
「名前ちゃーん」
悪魔が私たちのクラスに顔を出した。
「えっ!? 総司!?」
「沖田先輩!?」
私たちはびっくりして立ち上がる。
総司はずかずかと教室に入り、私の腕を引っ張る。
「一緒にご飯食べよ」
ニコリと笑って言った。


「…は!?」
そんなこと言われるのは初めてで、更にびっくりする私。
「だっ、だめです! 名前ちゃんは私と食べるんです!」
逆の腕を引っ張って総司に怒る千鶴。
「名前ちゃんは僕と食べるんだよ、ね? 名前ちゃん」
更に腕を引っ張りつつ黒い笑顔で私を見る総司。
…どうすればいいの!?
誰か助けて、と視線を泳がせる。
そうだ、平助がいた…!
他の男子達と食べている平助をチラリと見ると、気まずそうに視線をそらさせた。
あいつ…今日のご飯は私の手作りをふるまってやろうじゃないか…!
「名前ちゃん、僕と食べるんだよね?」
「い、いつも私と食べてるし、私とだよね!?」
私が考えていた間も戦いは続いていたらしく、怖い笑顔で2人が問い詰めてくる。
え、え、えーと…
「さっ、3人で食べればいいじゃん!」


…というわけで。
「今日のところは許してあげるだけだからね、千鶴ちゃん」
「私のセリフです!」
(ひいいいいいー!!)
未だにピリピリしている2人の間でお弁当を食べてます。
うう…この2人ってこんなに仲悪かったっけ…?
「明日こそは…」
「明日も名前ちゃんは私が守る…」
本当に怖いよ!? ブツブツ呟かないでよ!


話を変えようと、私は視線を泳がせる。
すると、千鶴のカラフルで可愛いお弁当が目に入る。
「ち、千鶴のお弁当っていつも可愛いよね!」
私が言うと、千鶴は嬉しそうにパッと顔を輝かせる。
「そ、そうかな? でも作ったのはお母さんだから…」
「千鶴ちゃん料理できなそうだもんね」
「総司いいいいいい! 黙って!!」
「むぐ」
私は咄嗟に総司の口にミニトマトを詰めた。
ほら…また千鶴睨んでるじゃん…
「…名前ちゃんのお弁当もいつも美味しそうだよね!」
千鶴が若干作り笑顔で言う。
「あ、ありがとう! まあこれも私が作ってるわけじゃないんだけどね…私の嫁が作っ」
「名前」
「ごめんなさい」
総司様…顔は笑ってるけど声が…声が怖いよ…しかも呼び捨てになってたし!


「お前らいつまで食ってんだよ…もう時間終わるぞ」
すると平助が来て、私たちは咄嗟に時計を見る。
…残り5分、だと?
「全然食べてない!!」
「沖田先輩のせいですね」
「千鶴ちゃん…?」
「こんな時に喧嘩しないで食べてよ!!」
ぎりぎりで食べ終わり、総司は足早に自分のクラスに戻って行った。
ふう…セーフだった!
「名前ちゃん、明日も私と食べてくれるよね…?」
「あ、ははは…」
若干ヤンデレ化した千鶴が怖かったけど。


お弁当は喧嘩腰じゃなく、楽しく食べようね☆
…心からそう思った昼休みでした。


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