私が総司を好きだと発覚してから1週間が経った。
多少ドキドキしてしまうものの、私は総司に普通に接していた。
いつも通り喧嘩して、言いあって、一緒にテレビを見て、前のまま。
だけどその日。
「沖田先輩、山田先輩に告られたんだって!」
そんな噂が、舞い込んできた。


「山田先輩…?」
聞いたことのない名前だ。
「名前ちゃん知らないの?3年の超美人な先輩だよ」
へえー…
「…名前ちゃん?」
「ん?」
「沖田先輩が告白されてもなんとも思わないの?」
「うん、別に…いつものことじゃない?」
「(やっぱりちょっと変なコ…)」
いつも通り、と私は思っていた。
しかし、次に舞い込んできた噂は―
総司がその告白をOKしたらしい。
そんな話だった。


「…え?」
私は思わずポカーンとしてしまう。
「お、沖田先輩が!?」
千鶴は私よりもびっくりしていた。
OKした、ってことは…
「…今、総司はその先輩と付き合ってるってこと?」
―私の、
約10年振りの恋は、なんと自覚1週間で終了してしまったみたいです。


「…はあ」
「名前ちゃん…」
早すぎる。
自覚1週間にして失恋。
…早すぎる!
「まあどっちにしろフられるから失恋なんだけどねー…」
「それは違うよ!」
机につっぷしながら言うと、千鶴は言った。
「…千鶴、ありがと」
「う…名前ちゃん、なんで平気なのっ…?」
「平気じゃないよ」
私が言うと、千鶴は驚いた顔をした。
「これでも堪えてるし、結構悲しい…んだけど…」
その言葉を言ってる途中で、少し涙が出た。
「名前ちゃん…!」
千鶴もつられて泣きそうだ。
「…千鶴…私、どうすればいいの…?」
私が言うと、千鶴は涙を拭いてニコリと笑って言った。
「彼女とか気にせずに、告白して奪っちゃえばいいよ」
―いつもの千鶴が言うとは思えないセリフだった。


千鶴にはそう言われたけど、結局私は何もできないまま家に帰ってきてしまった。
―しかし。
家には総司がいた。
「…そう、じ? 寝てるの…?」
おそるおそるリビングの戸を開けると、総司はまたソファで寝ていた。
…やっぱり寝顔可愛い。
総司の横に座り、私は思う。
彼女出来たのに、私と同居してていいのかな。
ずっと、私といつも通り喋ってくれるのかな。
もしかしたら、もう出てっちゃうのかな―
「っ…!」
やだ、そんなの。
ずっと、ずっとなんて無理だって分かってるけど、まだ一緒に、総司とだけじゃなくて、5人と暮らしたい。
まだ、行かないで。
「総司…っ」
そう言って私がまた泣いているとき。
「…どうしたの?名前ちゃん」
総司が起きて、声をかけた。


「なんで泣いてるの? 誰かに何かされたとか? 土方さん?」
「…総司」
「…え、僕?」
「総司、行かないで
私は総司にギュッと抱きついた。
「っ、名前ちゃん!?」
「行かないでよ、私と、私たちとずっと一緒にいてよ…
「行く…?」

「私、総司が好き…!」

―私はついに言ってしまった。
「…え?」
総司はびっくりした顔をして、そんな声を出した。
「…好きって? 名前ちゃんが僕を?」
「う、うん…」
改めて聞かれると恥ずかしいんですけど…
私がそう思っていると―更に強く抱きしめられた。


「僕もだよ、名前ちゃん」


…僕も、って。
「総司も、私のことが好き…?」
「うん、両想いだね」
そう言って総司はニコリと笑う。
両想い…!?
「え、だって、山田先輩は!?」
「山田…?ああ、断ったけど」
「え!?」
ってことは。
「あの噂はデマだったの!?」
私、思いっきり信じちゃったじゃん…
「噂? なんのこと?」
―だけど。
「…それのおかげ、かも」
噂のおかげで、総司に告えたから。


「総司、大好き!」
「僕も大好きだよ」


好き。
その一言で、世界が変わった気がしました―


「で、名前ちゃん」
総司がニコリと微笑んで言う。
「僕たち、付き合う事になるんだよね?」
…おお!
「そうなんだね…!」
「…名前ちゃん恋愛初心者すぎでしょ」
「…まあね」
付き合う、かあ…
「付き合うって、何するの?」
私が総司に問うと、総司はニヤリと笑って言った。
「ん? 何ってキスとかそれ以上とか?」
「はあ!?」
何サラッとこいつは…!
「あと…自慢、かな」
「自慢…?」
「いや、なんでもないよ」
…なんだろう、この黒い笑みは。


「まあいいじゃない、少しずつ進んでいけば」
「…そうだね」
「じゃあ、はい」
「んっ!?」
―総司に、キスされた。
「い、今少しずつって…!」
「僕的な少しずつ」
「絶対早いよ! 新幹線より早い!!」
「そう? いいんじゃない?」
「よくない! せめて三輪車くらいで!」
「えー、遅すぎるでしょ」
「いいの!」


付き合って1時間―
さっそく、階段を1つのぼってしまいました。


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