今日は買いもの当番でもなく、千鶴と喋ってからまっすぐ家に帰った。
剣道部も部活が無いらしいから、多分みんな家にいて、先生2人も早いのかな。
料理当番は一くんだ、何を作ってくれるんだろう。
そんなことを考えながら家に帰る。
そこまでは平和だったと思う―


あ、やっぱ靴あるし帰ってるんだ。
「ただいまー」
…あれ?
いつもなら誰か1人くらいは「おかえりー」と返してくれるものの、今日は誰も返ししてくれない。
「総司、一くん、平助ー?」
不思議に思いながらもリビングに入る。
すると―

「…おかえり」
「ああ、名前ちゃんかあ…」

ありえないくらい暗い2人がいた。
えっ? 何これ?
「どうしたの?」
「いやあ…もう死を覚悟、みたいな」
「何それ!? 平助大丈夫!?」
平助は遠い目をしている。 …えっ、生きてる…?
おろおろする私に、総司が説明してくれる。
「…今日、一くん帰ってこないんだ」
…平助の言っていることが分かった気がする。
つまるところ、一くんは県外にいる家族が今週だけ帰ってくるということで会いに行き。
トシも左之も、先生たちの飲み会みたいなので帰りが遅くなるらしい。
結論。
「「「空腹死だ(ね)」」」


だって―
私、総司、平助の中で料理が出来る人はいないのだから。


「…どうする?」
私が言った瞬間、総司と平助が手を出す!
「「じゃんけん!」」
…まじですか。
そして、ジャンケンの結果―
私:パー
総司:パー
平助:チョキ ということで。
「…行ってきます」
「おう、頼むぜ!」
私と総司、スーパーに行ってきます。


「何作るの」
「…簡単にカレーでどうでしょうか」
「ああ、それなら僕たちも頑張れば作れそうだね」
…カレーですら、頑張らないと作れないんです、私たち。
「カレーの材料って何だっけ」
「肉と野菜とルー」
「家にあるか見てくんの忘れた」
「昨日一くん肉買ってたような気がする」
「じゃあ野菜とルーで」
そして野菜とルーとあと少しお菓子を買い、私たちは店を出た。


しかし。
「……総司」
「あれ?」
「お肉ないじゃん!」
家に帰ってみると、肉はおろかソーセージも何もなかった。
総司を信じた私が悪かったんだ…
「もういい、今日は肉無しで!」
「えー!」
「平助買ってきたら? …自腹で」
「ごめんなさい」
これで今日のメニューはカレー(肉無し)に決定しました。


「…奇跡だ」
「成長したね、名前…」
「すげー、カレーだ! 肉無いけど」
かれこれ2時間後、「ちゃんとしたカレー」が奇跡的に完成した。
「すごくない!? 私すごくない!?」
「すげーすげー!」
「てゆうかもう8時過ぎたし早く食べようよ」
「「あ」」


3人分のカレーを盛り付けてテーブルに運び、席に着く。
「「「いただきます!」」」
そして、この美味しい素晴らしいカレーを―

ゴリッ

「…げ」
「硬い」
「じゃがいも…」
…あれえ?
「…まあいいか、ルーは美味しいし」
「ルーも不味かったら名前天才だけどな」
「うるさい平助! お前にはこれだ!」
「ちょ、じゃがいも俺の皿に入れんな! 総司も!」


この日、私は誓った。
―料理は、ちゃんと身につけないとだめだな、と。


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