今更ながら、私と平助の2年生2人と総司と一くんの3年生2人は先輩後輩関係にあたる。
同じクラスの平助とは喋るけど、2人とは学校内でほとんど会うことがなかった。
―だから、油断していたのだ。
「…嘘でしょ…」
まさか、2人のクラスと合同で体育をすることになるなんて。
「生沖田先輩と斎藤先輩…!」
「やばいめっちゃかっこいい…!」
「神様ありがとうございます…!」
「体育最高…!」
みんなはめちゃくちゃ喜んでるけど。
だってさあ。
総司って、私と学校で会うと…
「名前ちゃん」
めっちゃ笑顔で近づいてくるんだもん。
「…な、なんですか」
「体育一緒だって、よかったね」
「し、知ってますよ…」
「…あっそ」
自分で言っておきながら…!!
「…総司、苗字が困っているだろう」
そこに現れた救世主!
「えー」
「もうじき鐘が鳴る、行くぞ」
そう言って総司を引きずって連れていく。
「さすが一く……斎藤先輩ですね、ええ」
ふう、危ない。
普通に「一くん」って言うとこだったよ。
そんなことしたら…女子の視線が大変なことになる。
『(ジトー…)』
2人と喋ってただけですごいんだからね…


「お前ら並べー」
…今日の体育の先生は、左之だった。
もういやだ、なんでこんな大集合しちゃうの。
あとはトシだけじゃん…いや、さすがにトシは普通に授業だからいないし来ないけど。
そんななか、
「左之さん、今日体育何するの?」
総司がみんな疑問に思っていたことを聞いた。
3年と2年が合同ですることって…何だろう。
すると左之はニヤリと笑って言った。
「今日は3年対2年のドッジボールだ!」


…そして。
「いけーっ!」
「ふ、甘いな平助」
「くそっ…!」
「平助ごときが一くんを当てられるわけないでしょ」
今、コートには私と平助、総司と一くんしかいなかった。
みんな…特に女子、当たるの早すぎるよ!
「沖田先輩と斎藤先輩になら当てられても…いや、殺されてもいい!」っておかしいでしょ!
しかも2人私のこと狙わないし!
どうせなら早く当たって外野行きたいよ…
「あーっ!」
平助が投げたボールを、総司が軽々と取る。
そして…私のことを笑顔で見ている。
あっ…当てられたいとは言ったけど! せめて! せめて一くんの優しいボールで!!


「名前ちゃん」
総司がニコリと笑って話しかけてくる。
「な…なんでしょうか」
「ハンバーグ」
「…へ?」
は? ハンバーグ?
「ハンバーグ」
「…夜ごはん?」
「うん」
「今日はピーマンの肉づ…ああーっと! 急にハンバーグ食べたくなったな! 一くん今日ハンバーグね! いいよね!? 平助、左之!!」
「お、おい…」
「やった! 俺ハンバーグ大好き!」
「俺はそれに酒だな!」
「平助はピーマンね」
「ひでえ!」


……………………………あ。
みんな真顔になって、「やべえ」という顔をしている。
つい夜ごはんの話を…
「そ…沖田先輩が悪いんですよ!」
「え、僕悪くないよ」
「総司だろ!」
「はい、平助バーン」
あ、平助当たっちゃったよ。
…ってことは…
「あはは、名前ちゃん1人だね」
私VS総司、一くん!
もう、勝てるわけない…
私が当たるのを覚悟したとき。
チャイムが鳴り、左之が「終わりー」と言う。
…た、助かった…
しかしそのあと、総司が「ハンバーグ」と耳打ちしてきた。
…どんだけハンバーグですか…


―そのあと女子に囲まれて色々嘘をついてごまかしたのは、内緒です。


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