01
-見慣れた光景-
俺が巡察から帰ってくると、屯所内は何やら騒がしい。
またあいつが来ているんだろう、と俺はいつも通りに着替え、廊下を歩いていた。
すると―
「ぐえっ」
下からそんな声がした。
恐る恐る下を見ると、そこには寝転がった苗字と笑いを堪えている総司がいた。
「名前ちゃん…ぐえって…!」
「斎藤に踏みつけられた…死ぬかと思った…内臓出た…」
「悪い、小さくて見えなかった」
「あんまり悪いと思ってなさそうだけど!? あとそこまで小さくない!」
そんなところに寝転がっているのが悪い、と思ったがまた喧嘩になるので言わないことにした。
「で、お前はなんでまた来ているんだ」
「店終わって暇だったから」
こいつは近くの茶屋の娘で、昼はそこで働いている。
しかしその仕事が終わると「暇だから」と言って屯所に遊びに来る。
最初は副長も怒っていたが苗字は総司と仲良くなってしまい、もう手がつけられないと諦めたようだ。
「まだ帰らないのか」
「もうめんどくさいから泊まってく」
「どうせ僕の部屋に来るんでしょ」
「まあね」
「別にもう慣れたけどさー」
「…………」
泊まっていくこともたびたびあるが、それも諦めた…というかもうどうでもいいようだ。
「じゃあ一くん、夕餉になったら呼んでね」
「私たちはまた寝るから」
そう言うと、2人はまた寝転がってすぐに寝息をたてた。
「…今日の当番は総司だろう」
そう呟くももう遅く、俺はため息を吐いた。
それもこれも全部、もう見慣れた光景だった。
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