05
そういえば、初めて…だったかもしれない。
-彼女の働く姿-
巡察の帰り、たまたま苗字が働いている茶屋の前を通った。
この時間は大抵いないし、今日もいないと思っていた―のだが。
「いらっしゃいませー!」
驚いたことに苗字は接客していた。
「…苗字…?」
いつもとは違う着物姿に、少しドキッとした。
あいつ…新選組に遊びに来たときはあんななくせに、仕事のときはちゃんと働いているんだな…
なんか、安心した。
そう思い、俺が帰ろうとすると―
「名前さん!」
何やら後ろで男の声がした。
振り向いてみると、そこには1人の男がいた。
すると苗字はその男を見てニコリと微笑んだ。
「この間の! また来て下さったんですか?」
「覚えてくれましたか! また名前さんに会いに…じゃなくて団子を食べに来たんです!」
「嬉しいです! ではそこで座ってお待ちください」
苗字はパタパタと裏に入って行った。
そう…だよな。
苗字も同じくらいの年だし、何より愛想よく働いている。
仲の良い男がいるくらい、不思議じゃない。
だが…
「…?」
この胸の締め付けはなんだろうか。
彼女の仕事姿―
あまり、見たくなかったかもしれない。
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