「ねえ沖田、斎藤、これでどう?」
そう言って私は自分の唇を2人へと見せた。
「いいと思うぞ」
「あーはいはい、可愛い可愛い」
しかし、斎藤はともかく、沖田はスマホをいじりながらこちらを見もしない。
「ちょっと、見てよ!沖田!」
「あーはいはい可愛い可愛い、それなら土方さんもメロメロだー」
「でしょ!?じゃあ行ってくる!」
「ほんと単純だよね、あの子…」
「まったくだ…」
沖田がヒラヒラと手を振りながら何か言って、斎藤が賛同しているけどよく聞こえない。
私はパタパタと走り出す。今度こそ気付かせてやる!、と意気込んで。
向かうは職員室。ガラリと扉を開けた私は、大きく叫んだ。
「土方せんせー!!」
「っるせえな!またお前かよ!」
そう言いながら、手にしていた書類を机に置いて、そのひと―土方先生は私の元へとやってくる。
私は胸を高鳴らせながら言った。
「あの…私、なんか違うところないですか?」
こんなセリフを言うのはもう何度目だろうか。
私自身ももう覚えてないほどだし、先生は「またか」という顔をしている。
「今日は何が違うんだよ?」
「だから、それを当ててよ!」
「めんどくせぇやつ…」
そう言いながらも土方先生はジロジロと私を見る。
お願いです先生、今日こそは気付いてください…!
「…唇?」
その願いが届いたのか、先生が言い当てた。
やっとの正解に、心が躍って顔がにやける。
「そうなんです!!実は―」
友達から良いリップを教えて貰ったんです、と私が言おうとしたとき。
「昼飯に天ぷらでも食ったのか?テカテカしてんぞ」
先生が、あり得ない一言を言った。
怒りがこみ上げてくる。ああ、結局先生はまた気付いてくれないんだな、と。
「先生の、バカー!!!」
腹に一発お見舞いしてから勢いよくドアを閉める。
「ウッ…おいてめっ、ふざけんなよ!!」
先生が何かを言っているような気がするが、そんなのはもうどうでもいい。
自分の教室に戻ると、斎藤は憐れむような顔をして、沖田はいつものようににやにやしていた。
ほんとうははきづいてるくせに
きづかないふりなんて、ほんと意地悪。
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