今日はめずらしく伏見と秋山が二人で非番がとれた日だった。インドア派な伏見に合わせいつも通り、伏見の部屋でゆったりとした時を過ごしていた。
ふと、部屋を見渡して秋山はくすりと笑った。もともと生活感の欠片もなかった伏見の部屋にいろいろなものを買っては持ち込みというのを秋山が繰り返したため、必要な家電からくまのぬいぐるみまで置かれるようになっていた、
伏見さんの部屋に自分の選んだものがある。それだけのことがこんなにもうれしい。余計なものがある無駄を好まない彼が俺の選んだものはひとつも捨てないでいてくれる。彼の世界に俺のものがあふれているようだった。

「なーに笑ってるんですかァ。」

「あ、すいません。なんだかこの部屋も随分物が増えたなって思って。」

「アンタがこれもこれ持っていうからでしょう。ぬいぐるみとかこんなにいらないんですけど。」

そういいつつ伏見は近くにあったアルパカのぬいぐるみを抱き寄せた。

「伏見さんにぬいぐるみが似合うのがいけないんです!なんでそんなにかわいいんですか!」

「アンタほんとにこれが似合ってると思ってんですか。」

「こんなにかわいいじゃないですか…!!むしろわからないんですか!?そういえば最初に一緒に買い物に行ったときは俺らまだ付き合ってませんでしたよね。」

「そうだったか。」

「憶えてないんですか。あの日は雪が降るくらい寒い日で…」







「あ。伏見さんおはようございます。」

10分前に伏見が来たときには秋山は端末をいじりながらたっていた。こうして待ち合わせをしているだけでデートしているみたいだと秋山は頬を緩ませた。

今日は伏見の部屋にあまりに物がないのを見かねた秋山が強引に買い物に誘ったのであった。なんだかんだで押しの弱い伏見は断りきれなかったが、こんなに上機嫌な秋山を見れたのだから来てよかったと思った。



「…おはよーございます。アンタ、いつからいたんですか。」

「そうですね。1時間くらい前から、ですかね。」

「はぁ?」

「伏見さんと出かけられるのがうれしくてつい。」

「アンタほんと暇人なんですね。というか馬鹿なんですか。」


呆れて口をぽかんと開けた伏見さんは最高に可愛い。この可愛らしさはもう罪なんではないか。生きていてほんとによかったと心から思った。うれしくて緩んだ口元は今日1日戻ることはないだろう。それほどまでに幸せを秋山は感じていた。

合流した秋山と伏見はまずは家電を見に行った。家電となると秋山より伏見の方が詳しかったが色などのデザインは秋山と意見を交えながら決めていった。
冷蔵庫や電子レンジなど購入して寮に直接送ってもらうように手配して、次は生活雑貨を見にいこうという話になった。
そして店を出ると風景が見渡す限りの白銀になっていた。日の光に反射するそれはまぶしいくらいに輝いていた。

「今日は寒いと思ったらすごいですね。こんなに冷えるならもっと厚着してくればよかったかもしれないです。」

「ほんとアンタ薄着してますね。」

「伏見さんはマフラーまでしてずるいです。」

そういい秋山は恨めしそうに伏見を見た。そんな秋山を見かねたのか溜息をついてマフラーに手をかけた。

「…しかたないですね」

「…!!」

一瞬驚いた顔をした秋山だったが伏見のしたことを理解した途端ひどく幸せそうに頬を緩ませた。

「伏見さんうれしいんですけど寒くないんですか?」

「ちゃんとアンタより厚着してきてますから。ほら次行くんでしょう?」

その後もいろいろな店をまわり、夜が遅くなるまで二人で買い物を楽しんだのだ。



「あのときのマフラー見るたびに俺はあの日のこと思い出してますよ。」

「俺、アンタにマフラーあげたせいでもうマフラーない。」

「え、そうだったんですか。なら買いにいかないといけないですね。また待ち合わせでもしてみます?」


(雪とマフラーとふたりの最初の思い出)




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