気づかないように、

そうだよ。
僕はただそれだけに必死で。









「なあ、
昼飯食いにいこうぜ!」



「あー、そうだな。
仕事も一段落したし」


そう言って僕はパタリと
ファイルを閉じた。

目の前には山積みの資料。
火影さまに命じられる
仕事はいつも鬼畜の極みだ。

このまま仕事に没頭してると
昼飯の機会を失ってしまうだろう。

このあとには
S級任務も入ってるというのに…

今日は帰れるかな。

そう考えると頭の片隅に
一瞬あの子のことがよぎった。





「テンゾウ?」


ハッと我にかえった。

思い返して、苦笑する。
まるでペットを想う飼い主みたいだ。


「なに笑ってんだよ、変なやつ…。
なあ今話題の洋食屋行こうぜ!」


「話題の?」


すっとんきょうな声が出た。


「ああ。なんでも
看板娘の子が超絶美人だって!」



―――嫌な予感しかしない。

そしてこういう予感は
大抵当たる。





「いらっしゃいませー!」


「今日も可愛いねえ、
ちょっと話しようよ?」

「ふふ、仕事中なの。
ごめんなさい」


天真爛漫な彼女がそこにいた。




「やべーー超かわいい!!」


一緒に来たやつはテンションがうなぎのぼり。
そして僕のテンションはだだ下がりだ。


勘弁してくれよ、ほんとに。




「ねえ、帰ってもいい?」

「はあー?何言ってんだお前!!
せっかく来たんだから楽しんでこーぜ」

「なにが楽しむだ、キャバクラでもあるまいし」




「――――てんぞ?」



帰ろうと背を向けていた僕。

聞きなれた声が耳に届く。


振り向けば笑顔満点の君。





「いらっしゃいませーー!!
来てくれたんだ!」


るんるんと僕に抱き付こうとする彼女を、僕は手で制した。
ああ、もう、だから外で会うのは嫌だったんだ!!!



「席を案内してくれるだけでいいから、」


僕が小さい声でそう言うと、彼女の顔から笑みが消える。






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