「聞いたか、テンゾウの奴彼女できたんだってよ」

「え、本当か初耳!」

「なんでも超絶美少女だとか」

「すげぇ!!」

「しかも同居中で婚約間近だとか」

「えぇぇええ!?」



丸聞こえすぎる。
わざとか。これはわざとなのか。

賑わう待機場所の入り口前で、僕はふうー、とため息をついた。
ひどいでたらめだな。一体こんな噂を流した奴は誰なんだ。

こほん、と咳払いをしてから僕は待機場所へ入っていった。僕の登場に、暗部の先輩たちは見えない仮面の下で乾いた笑い声を出す。


「よぉ、テンゾウ」

「残念ながら僕に彼女とやらはいませんよ」


はっきりそう言うと、先輩は首をかしげた。


「本当か?噂たってるぞ」

「誰から聞いたんですか、その噂」


「カカシだよ、カカシ」



「………」



―――嫌がらせだとしか思えない。

カカシ先輩のSな笑みが浮かんでくるようだった。
彼も一応僕の先輩なのだ。だが、これだけは言わせてくれ。
―――くぉら、カカシッッ!!!!


***




「おかえりなさい」


家に帰ると高い声が聞こえてくる。こんな日常にもようやく慣れてきたものだな。
超絶美少女と同居……ここだけはあってたか、なんて頭の片隅で思う。
僕は息をついてから「ただいま」と言った。


「晩御飯あるよ」

「ありがと、もらうよ」


湯気のたっている食事たちを見渡した。ほんとに料理うまいんだな。どれも美味しそうだ。


「ね、テンゾウ。ここの部屋って日当たりいいよね。昼間ね、すごく眩しかった」

「そーいえば君のいたとこは暗かったからね」

「うん、この部屋ってほんといーな。部屋中からテンゾウの匂いもするし」

「ぶっ、」


つい飲んでいた湯飲みに咳き込んでしまった。
前々から思ってたが、いつも彼女の言葉の節々に照れてしまうようなピースが散りばめられている。

そうか。
彼女はナチュラルエロスの天才なのか。







「君は、社会に出たほうがいいな」

「え?」

「どっかで働いてみたら?
色々世界のことを知ったほうがいい。昼間はどうせ暇だろう?」

「………」


彼女は僕の言葉に目をぱちくりしていたが、いきなり席を立って僕に抱きついてきた。


「え、ちょ、食事中…」

「嬉しいっ!テンゾウ大好きっ」

「へっ?」

「私、飼われてるのに外出ていいのっ?逃げ出すかもよ!?」

「だってここ以外に居場所はないんだろ」

「うんっ。出ていかないよ、私テンゾウ好きだから」

「……あのねぇ、社会に出たら嬉しいから抱きつくとかありえないんだからね。」

「テンゾウ顔赤い」

「うるさいなっもう!」




てな訳で、彼女は近くの洋食屋で働き始めることになるのだが、その可愛さのおかげで里の有名な看板娘になるのに時間はかからなかった。



経験値1ポイントの加算

…彼女の噂を聞くようになるのは、正直かなり複雑。

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