そんなわけで始まった奇妙な生活。
これからどうなるかなんて見当がつかないけど、とりあえず。
「あのさ、わかると思うけどベッドは1つしかないわけ。君はとりあえず今日ソファーで寝てくれる?」
僕のこの一言に彼女は目をぱちくりさせた。疑問に思ってることは、少なからず予想がつく。
「……一緒に寝ればいんじゃない?」
「…君なら言うと思ったけど、僕はごめんだね」
「テンゾウって…変なの。こんなベッド広いのに……」
「そういう問題じゃないだろ」
「じゃあどういう問題?」
「……男女の問題」
彼女は目を丸くして僕を見た。そしてベッドに腰かけてた僕に、ずいと近寄る。
あぁ、また変なことを聞かれる予感。
「テンゾウは私とセックスしたくないの?」
「はい??」
「だってみんな…、それ目的だったよ」
「………」
……困った。
彼女にはいちいち普通の行動に理由がいる。
寝る目的で君を飼った?
馬鹿いうんじゃない。
無責任に君を助けた責任で君を飼ったんだ。
「悪いけど君は僕のタイプじゃない」
「…初めて言われた」
「おめでたい子だね。
そもそも君は買われて無理やり抱かれてたんじゃないのかい?なのに自分からそれをふっかけるなんて、娼婦と変わらないじゃないか」
僕の堰をきったように溢れ出す言葉に、彼女は何も言わずまばたきをした。
しまった。言い過ぎたか?
そう思った瞬間、彼女は柔らかく微笑んだ。
「テンゾウって良い人」
「え?」
「あのね、私ね、
抱かれることが自分の存在意義だと思ってたの。だからそう言ってくれた人は初めて。
テンゾウは私を人間として見てくれる。
初めて会ったときも思った。
テンゾウになら抱かれてもいいかなって。本当だよ」
「は……」
何を言い出すんだこの子は。
しかも普通の人間なら恥ずかしがるようなことをさらっと。
人を飼ったことはないが、買われた少女は皆こうなのか?
いや、この子の元々の性格か。
「…テンゾウ、顔赤いよ」
「………君、今日はベッドで寝ていいよ」
「……いいの?」
「うん、僕がソファーで寝る」
「え、それはだめ、」
僕がベッドから腰を浮かすと彼女はそれを阻止しようと僕の腰に抱きついてきた。
重力に従い、僕の身体はふたたびベッドの上へ。
「なんなんだい君は、
面倒くさいなぁ」
「だめ、テンゾウは私のご主人様なんだから。私がソファーで寝ますっ」
「さっきと矛盾してるぞ、
ベッドで寝たかったんじゃないのかい!」
「あれは、2人で寝たのなら私もベッドで寝れるのにって思ったの!」
「2人で寝るなんて冗談じゃないっ」
「テンゾウは私がタイプじゃないって十分わかったよ、もうっ。おやすみテンゾウ寝ますっ」
不貞腐れたように彼女はソファーへ移った。
あぁ、もう、そういうことじゃない。
次に口に出そうとした言葉を僕は強引にねじ伏せた。また彼女に何を言われるかわからないからだ。
そんな純情持ってないの
一緒に寝たら襲わない自信がないんだ。
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