自分はもう少し冷酷な人間なんだと思っていた。
出生が出生だから世界の底辺のような人間は間近で見てきたし、そんな人間たちに同情という感情を持ったことはない。それなのに、どうして…


「どうしてこうなったんだ…」


目の前の少女は可愛い顔で僕の顔を覗きこんでくる。僕の部屋にこんな可愛らしい少女がいるなんて違和感でしかない。






『わたし、家事できます。なんでもやるから、テンゾウに飼われたいの』


あの、問題発言をしたあと、彼女はこんなことを言って僕に懇願してきた。呆気にとられる僕は返す言葉を失っていた。


『飼、われたい…って』

『ただで人を買えるんだよ?』

『いや、人を買いたいとか思ったことないし……』

『わたし、夜の奉仕だって上手いよ』

『わ!そ、そんなこと言っちゃダメだ!!』


混乱して熱くなった僕に、カカシ先輩は仮面の下で絶対笑いを堪えたような顔をして一言いったんだ。


『テンゾウが連れ出してきたんだから責任とりなよ』


僕にとって大先輩だが、言わせてほしい。
くぉら、カカシーー!!!!




てな訳で、彼女は僕の部屋にいる。
木ノ葉に帰る前に買ってあげたワンピースを着ている今の彼女は、普通に美少女だ。お面とヘッドギアを外した僕に、彼女は興味津々のような顔をする。


「テンゾウ、そんな顔してんだね」

「…僕、暗部だからあまり人に顔を見られてはいけないんだけど」

「そんなんじゃ生活なんてできなくない?」


この子は…疑問に感じたらすぐ質問する、雛鳥みたいな子だな。
生活だって成り立ってんだから仕方ないだろ。
少し考えてから、言葉を口にする。


「……僕は、素顔のテンゾウは、誰とも関わりがないんだ。仮面を外した僕を、知る人は少ない。だから生活に支障はないよ」



僕は僕であり僕ではない
仮面をかぶった僕は、僕なんかじゃないんだ。だから孤独を感じていたんだよ。


あぁ、きっと僕は、仮面以外のつながりを欲してる―――…



いきなり、放り出された僕の手に温もりを感じた。見ると、彼女は僕の手に自分の手を重ねていた。顔を上げると、彼女の笑顔。



「じゃあ私は、仮面を被ってないテンゾウと関わっていきたいな」


目を、見開いた。
不思議な子だ。今まで僕は、他人にそう言われたかったのかもしれない。それが、なんで、君にはわかるんだい?




心を繋ぐのはその言葉


奇妙な生活が、始まった。

_




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -