「でも無事だった」
「結果論よ。やめて。心臓に悪い」

また。
あいつはポケモンを助けるために無茶をした。

何かの下敷きになったと思っていたけど、幻覚だったのかしら。
強運にも擦り傷程度しか外傷は見当たらない。
毎回毎回。
あたしの心臓は一生のうちに、いくら止まったのだろう。
今回は擦り傷くらいで済んだけど、次は?
あいつの無茶には慣れたけど、無茶をしてほしいわけじゃない。
いつもどんな気持ちで、その光景を見ているかわかってるんだろうか。
吐き気がする。
手当てをしながら、思わずため息と眉の歪みが発生した。

「違うだろ?」
「何がよ」
「気をつけるのはお前」
「は?何言って…」
「お前が行きそうだったから、俺が行った。それだけにしかすぎない」
「………」
体が勝手に動いたのも事実だけどなーと、切り口が滲みるのか、腕に息を吹き掛けながら摩る黒髪はあどけない。


驚きと無心で見入り。
あたしのせいにするなと、涙と苦しさをごまかすためにあいつの頭を一つ。


ボカ。


撲ってやった。



END

――――――――――
サトシに負けじとカスミも自分を省みないから。
少し大人になって。カスミをもっと知って。サトシもそれに気づいた



危なっかしいのはカスミ。

守るのは俺。

つか、体が勝手に動く。


100718