「あいつ、誰?」
「?あ、ツトム?」
「ツトム?」
旅の区切りをつけ、久方ぶりに訪れたハナダジムの馴染んだ光景に違和感が一つ。
見知らぬ男がポケモンたちの体調管理をしていた。

トレーニングをし終えたカスミに、少し離れたところでその様を見ていた俺は率直に聞いた。
なんの躊躇もなく、彼女の口から当然と紡がれた名前に眉間に皺がよる。

「ちょっと前から、ジムを手伝ってくれてるの」
「なっ!何してんだ!」
「何よ、ちゃんと給料は払ってるわよ」
「っそうじゃなくて!」
「ジム運営がどれだけ大変か知ってるでしょ!?お姉ちゃんたち居なくて大変なの!」
今また旅行だかなんだか知らないが、カスミの姉たちが家を空けているのは知っている。
ジム運営がどれだけ大変なことなのかも。
それでも、なんで手伝ってもらう相手が男?
いや、力仕事があったときやその他諸々、男の方がいいのもわかる。わかるけど。
挑戦者が来る、ジムリーダーとしての仕事、それらがあるとしても、一日中男と二人きりだということをわかっているのだろうか、このお転婆は。

「……大丈夫よ、ツトムはそんな子じゃないから」
あぁ、やっぱり。


昔から、鈍感、お子ちゃまと言われてたけど。
今もたまに言われるけれど。
鈍感はカスミの方だ。
確かに、昔を思えば分かってなかった部分はたくさんあった。
それでも、自分は男なのだ。嫌でも、男と女を意識せざるを得ないときが来る。
鈍感ではいられなくなるときが来る。
それは自分が男だからだ。女の人より快楽に溺れたくなる男だからだ。


夜な夜な彼女に思いを馳せ、自分で自分を慰める嫌悪や情けなさ、彼女への申し訳なさに苦しんでいることを、大丈夫だと言ってのけるカスミは知らない。
己の奥でくすぶってる炎と蠢く黒さをカスミは知らない。



頭痛がする。
目の前がくらむほどの頭痛がする。

じくじくと痛む頭に。
笑顔をくれる彼女に。
そろそろ限界が近いことを。


知る。


END

――――――――――
一応二人は付き合ってる設定。初めは嫉妬で甘いのにしようと思っていたのに、サトシが黒いww 
ツトムとカスミの関係を知ったらサトシは終わりwwプッツンいくと思いますHAHA

100620