目の前の綺麗にラッピングされた四角い箱を見つめる。
大きさは簡易な筆箱くらい。
中身はチョコレート。

今コレをあいつに渡そうか渡さまいか考える。

いろんな想いが巡る。
誰に言うわけでもない義理を繰り返す言葉。
それに隠された気づいて欲しい本音。


ふいにあいつの顔が浮かんだ。
『カスミ!』
手を振り、屈託なく笑う顔。
「…………」



バリっ


弾けたようにビリビリと包装紙を破いた。

出てきた見た目は上出来の、手作りチョコレートを一つ口に放り込めば。

渡さなくてよかったと思えるほど。
しょっぱい味がした。


END

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バレンタイン話。サトシのマサラに負けてしまったカスミ。渡せない下心。

100206