バタン!と大きな音をたて、ダイニングに続く扉が開いた。 肩で息をする紫の目を持つ人。 ラクスは驚く様子も見せず、緩やかに振り返ると「どうなさいましたか」とたおやかに言葉を紡いだ。 「ラクス、僕。みんなにおめでとうって言われた。僕が生まれてきたことにありがとうって。ラクス、僕。僕は…嬉しい」 「そうでしたか…」 切なく笑うキラに、ラクスは微笑みを向け、彼に近づいた。 「こんなに嬉しいことってあるかな」 ラクスの肩口に頭をのせ、キラはその顔を隠す。 肩に掛かる息づかいが弱々しく笑っている。 あやすようにキラの頭を撫で、ラクスはその声に耳を傾けた。 「ではキラ、わたくしも」 重なる声はどこまでも優しく響く。 「あなたを見つけて…あなたがこの世界にいてくれて、わたくしは嬉しい。生まれてきて下さってありがとうございます、キラ」 皆さんに先を越されてしまいましたわねと言うラクスに、キラは目にうっすら涙を溜めて柔らかく微笑んだ。 そうして、痛いくらいに彼女を抱きしめるキラの腕は強く、優しく。 「お誕生日、おめでとうございます」 頬に落とされた口づけは最高のプレゼントとなる。 END ―――――――――― キラ、誕生日記念。 時間軸は謎← |