「よ、カスミ。」
「あら。今日はどうしたの?」
「それが、昼間タケシが水を汲んでた時にさ!……」
今は遠い地で、毎日ではないけれど、連絡を入れてくるサトシ。
確証があるわけでも、何かしらの意思表示があったわけでもないが、無精だったはずの彼がこうして連絡をくれるのはたぶん、何かあったから。
物理的に事が起こったに関わらず、もしかしたら、何かしらの思想が彼の心に重くのし掛かったのかもしれない。
「へ〜。じゃあ大変だったけど、良かったわね」
「あぁ!」
正直、こういう時自分はどう対応すればいいのか解りかねている。
と、いうよりも、今の自分のこの態度は正しいのか自信がない。
そのままどうしたのか聞くべきなのか。
それとも、サトシから言ってくれるのを待つべきなのか。

まだサトシをわかってあげられないもどかしさを胸に抱きながら、それでも、わからないならそれでも良いからと自分に言い聞かせ、とにかくどんな話でもサトシの話は聞こうと笑顔をむける。
それは義務感という同情や加護欲ではなく、彼を癒したいという彼への好意。

「じゃ、そろそろ切るよ。ごめんな、遅くまで」
「ううん、気にしないで」
(あたしも、切りたくないから)
というのは恥ずかしくて言えないけれど。

「カスミ」
「ん?」
「ちゅー」
「は!?な、何言って…!」
そう言って画面越しに口を寄せるサトシに一瞬にして頬が熱を帯びる。
「嫌よ!できるわけないでしょ!」
恥ずかしさから拒否を伝えると、彼はあっさり身を引いた。
ほっとしながらも、心の奥底でなんだ、結構簡単に…と残念に思っている自分に気づいたが、キョロキョロと周りを見回すサトシに首を傾げた。
「??」
「大丈夫、誰も見てない」
そういうことじゃないんだけどなと苦笑しつつ、サトシが無邪気な笑顔をむけるから、胸がキュンとした。
自分はいつからこんなに甘くなってしまったのだろうか。
いや、違う。無自覚に乙女をくすぐるこいつが悪い。
「しょうがないわね!」
だから。
身を乗り出しながら、本当は彼に直接触れたいと思っていることは、まだまだ秘密。





END

――――――――――

がすっ!

「なぁにが『しょうがないわね』よ!」
「そうよそうよ!」
「っ…たぁ〜い。アヤメ姉、ボタン姉!?い、今の見て…!?」
「やるなら見えないところでやんなさいよね!」

げし!

「ちょっと!さっきから殴らないでよ、痛いじゃない!」
「あーぁ。どっかにいい男転がってないかしら〜」
「…ねぇボタン。今度サトシ君来たらどうしようか」
「…!そうね!どうしよっか!」
「ちょ、サトシに何するつもりよ!やめてよ、ちょっかい出すの!」
「あー楽しみねぇカスミ。サトシ君に会える日がv」
「ちょっとお姉ちゃんたち!!」

仲好きことは美しき…かな?



110911