「人の業で溢れた僕のそばに。君を縛り付けてしまって、ごめん、ね。求めて…ごめん」

苦痛に歪む顔が悲しいと叫ぶ。
前を歩いていたラクスは振り返り、その瞳を大きくさせた。
「……わたくしをそばに置いて下さるのですか?そばにいて…良いのですか?」
まるで信じられないというように彼女は呆然と立ち尽くした。
その姿に、今度はキラがその瞳を大きく揺らす。

彼女は言った。
キラはきっと一人で歩いていくだろうと思っていた。
悲しいことをたくさん抱えたあなたは。
あなたの傍にわたくしを置いてはくれないだろう、傍にいてもわたくしを見てはくれないだろう。そう思っていた。
もう誰とも歩くことはないのだろう。と。


ごめん。優しくなくてごめん。
優しくできなくてごめん。
君の純粋に触れてしまったら、君がいなくなってしまうんじゃないかと思っていた。
大切にしてしまったら、それが消えてなくなってしまうんじゃないかといつも怯えていた。
だって。
僕が想うモノはすべて……。


「嬉しいです、キラ。嬉しい」
一筋の涙をこぼし、ラクスは微笑んだ。
それはとても美しく。

今だけは良いだろうか。
血で染まった穢れた手で、彼女をこの腕の中に抱いても。
抱きしめても、許されるだろうか。

どうか。
どうか今だけは、この手で彼女に触れさせてほしい。

キラは手で顔を覆った。
泣きながら優しく微笑む少女に、この涙が見えないように。

そうしてキラは、傍まで歩み寄ってきた彼女と共にいつまでも泣き続けた。

意思に反して。
望まない黒で染まってしまったこの手を。
いつまでも。
いつまでも。
彼女と共に。




END

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思ってたのと少し違くなってしまったけど。
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120517