「幸せって何ですか?」


「人の幸せってなんですか?」

「なんだよいきなり。珍しいな、お前がそんなこと聞くなんて」
「いえ、何だかふと思いまして…。あの、夾君にとっての幸せとはどういうものですか?」
「ん〜そうだなぁ…。心が満たされる瞬間?もの、こと。かな。どう言っていいかわかんねーけど」
「………。それは。それは、安易に幸せはお金で買えるってことを…言ってるんですか?」
「………。そう、だな」
「…………」
「なんだよ、その顔(つら)」
「え?あ、いえ…」
「わかるよ、お前の言いたいことは。でもそれがイケナイことだとは思ってないから」
「どうして…ですか?いけないとか、悪いとかそういうことではなくて。人は…たいていの人達は、お金で買える幸せに疑念を持っています。私も、できることなら人との繋がりの中でそれを得たい。夾君は、違うんですか?」
「……。もうすぐ空腹によって死ぬって人がいるとして。そこに100円のお金がありました。その人は急いで、その100円でパンを買い、食べました。一口食べたその人は感じた。なんて幸せなんだと。これ以上の幸せはない、と。お前はこの人を憐れに思うか?」
「……いえ」
「人の幸せは人が決められるものじゃない。今の話に金額の差異はあれ、その人が幸せと感じれば、それが幸せと言うものだ。食欲、物欲が満たされて幸せを感じる人もいる。それは幸せじゃないってどうして言えるんだ?幸せの定義なんて人それぞれだ。お金で満たしたって悪いわけでも、間違っているわけでも、ましてやカワイソウでもないと思う。俺はそれもそれで一つの幸せなんだと思う」
「………」
「あ、悪い。言い方まずいよな。あくまでもこれは俺の、一人の考えだから。お前はお前の幸せの定義があるんだから、これはその根底を持って、一つの考えとして聞いてくれよ。頼むから」
「はい…」





「では夾君」
「ん?」
「夾君は今、幸せですか?お師匠さんや由希君や皆さんと離れて…裕福とは言えない生活ですけれど、それでも夾君は幸せですか?」
「…………。おう。やべーくらいに」
「ふふ」

「お前、は?」
「……私もです。私もやべーくらいに幸せなのです」
「そっか。やべーくらいにか」
「はい、やべーくらいに!」


END

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夾透。こんな話は果物籠にかぎるww

100729