気づかなかったそれは、想いが強く、優しくなればなるほど、明確に示してきた。

「なぁ。カスミは俺のこと好き?」
「な!?ななな何よいきなり!」

赤く慌てるこの反応。
恥ずかしがり屋な彼女なら、可愛いと思えるものかもしれない。

けれど。
「いいから。どうなんだよ。好き?」
「っ……。………好、き」
「…………」
照れながら述べられた言葉に、昔の自分は素直に喜んでいただろう。
でも彼女への想いが揺るぎない確かなものになり始めてきた時、違和感を感じるようになった。

壁。とでも言うのだろうか。

理由などわからない。
ただ、感じだ。感覚的にそう思う。
彼女の「好き」が聞こえない。

同じ想いであるはずなのに距離を感じる自分は、彼女を信じていないと言うことなのか。

そうやって疑心は募り、今日みたいに目が合わない日は、感情に任せて乱暴に彼女を抱いた。

疑心や焦り、苛立ちをぶつけるように。

こんなことは止めるべきだと判っていても、そんな自分を、涙を流しながら甘受する彼女が酷く不思議で、余計に苛立って。

何故だとぶつける想いは強くなる。

彼女の本心が掴めず、また見せようとしてくれない彼女に、お互い。

悲しい傷が増えていくばかりだった。



end


110616