ハローハロー宇宙人さん
昼休み編
「なあそれ美味いのか?」
お弁当を広げたところで、水野さんに聞かれて思わず首をかしげる。
入学式から少したって、結局俺は水野さんと一緒に過ごしている。
多分、友達ってやつだ。
理科の授業や体育の時なんかは後二人仲良くしてくれるクラスメイトがいるけれど、お昼休みは大体水野さんと二人で食べていた。
だから今日も一緒だけど、水野さんが不思議なことを言う。
目の前にあるのはごく普通のちくわの磯部揚げ。だけど水野さんが冗談を言っているみたいには見えなかった。
「これ?ちくわだよ。磯部揚げ。よかったら食べる?」
俺が聞くと、水野さんは一瞬ぽかんとこちらを見た後、笑顔を浮かべて「じゃあ、武藤君に甘えて。」と言って俺の弁当箱から磯部揚げを一つつまんだ。
「これ美味いな。」
ニコニコと笑顔を浮かべる水野さんの顔が、野暮ったい瞼さえなければ随分と整っている顔立ちをしていることに気が付く。
「どうした、武藤君?」
細めた目を開いた水野さんは不思議そうに俺の顔を見る。
なんて説明したらいいのか分からなくて思いついたことを口にしてしまう。
「きゅ、給食で磯部揚げでなかったの?」
「ああ、俺のとこ給食無かったから。」
ちゃんと聞いてないけど、水野さんは他県から引っ越して来たのかもしれない。
「そうなんだ。俺の中学はね、先生が男子も女子もさん付けで呼ぶようにってうるさくてさ。」
さっき、思わずじっと見てしまったことを水野さんに悟られたくなくて半ば無理やり自分の中学の話をしてしまう。
「それで、『水野さん』なんだ。」
「……ごめん。」
多分何となく女子みたいで良くない気がするのに、癖みたいな感じでそう呼んでしまうのだ。
「なんで謝るんだよ。武藤君に水野さんって呼ばれるの結構気に入ってるよ俺。」
武藤君が今日二つ目のカレーパンを食べながら言う。
「そっか。」
気の利いた返しなんてやっぱりできなくて、気恥しい気分になってもそもそとお弁当を食べることしかできなかった。
了
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