短い文と会話が繋がっているだけ。雰囲気で読んでください…








『やぁ、ロージャ』
「久しぶりだな、ヴィーチャ」

久しぶりの電話を、俺は家のお気に入りのソファ(身体が半分沈み込むようなタイプのやつだ)で取った。

「急にどうした。というか今からユーリのフリーだろ。観なくていいのか」
『勿論観るよ。でもその前に君に伝えたい事があってね』

いつものどこか茶目っ気を含んだ声ではなく、サッパリとした声。何となくは察したが、続きを促した。

『ロシアナショナルに合わせて調整しようと思う』
「……そうか」
『何も言わないんだね』
「ユーリ・カツキ……彼の演技を見たからな。滑る前から、滑った後まで」
『それで察してくれるのは君くらいだよ』
「そんな事はない」

いいや、君だけだ。どこか楽しそうな、嬉しそうな声がそう断定した。

「……もうじきに始まる。続きは後で聞こうヴィーチャ」
『わかった。じゃあ、また』
「あぁ」

真っ黒になった画面を見て、俺はゆっくりと目を閉じた。頭の中に静かな旋律が奏でられ始めた。



+++



ユーリ・カツキのエキシビション、俺は先と同じ体勢で観ていた。動画の時より格段に(という言葉では正直物足りないのだが)増した艶と憂いに、眦が下がる反面、心が少しずつ凪いでいくのがわかった。ヴィクトルがそこに合流してから時間にして15秒ほど。俺は再び瞼を下ろした。

「よかったな、ヴィーチャ」

頭の中で奏でられる旋律は一つの高まりに掛かっていた。


[8/10]



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