「ま、まさたかっ……!」


そう絞り出すように声を出す。すると、自分に軽く覆いかぶさっている男は、小さく何だと声を発した。
その、低くて心地よい声にうっ…と声を詰まらせる。

自分は人の機微を察するのが不得手なほうである。でも、わかってしまう。


「……ね、落ち着こう?」
「十分に落ち着いているが」


そう言って、内腿を撫でるのをやめない目の前の男に何と言えば聞くのだろうか、と視線を下げて考えていたら、急に顎を持ち上げられて強制的に視線を上げさせられた。
その瞳は、ある熱に魘されているようで。こちらにもその熱を伝えてきそう。

本能がそれを恐怖する。熱の伝播を、怯えた。そんな私の様子を察したのか、男は小さく息を吐いた。これで解放される、そう思った私は身体の強張りを弛緩させる。でも、それがいけなかった。男はそれを察するや否や、さらに私が逃げられないようにソファに強く縫い止めた。

やられた、と思ってももう遅い。身体は押さえ付けられ、逃げる算段はもうつけられない。

男の瞳の熱が一層高まるのがわかる。ゆっくりと近づいてくる顔に、その瞳に半ば捕らえられかけられている私は顔を反らせなかった。








深夜のデートに油断は禁物。


title by 確かに恋だった






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