及川と幼馴染
両親が旅行→女の子一人は危ないからと及川宅にお泊り中









腰に熱を感じて目が覚める。何か、しがみつくようなそれに、あぁ、あれかなと思い至る。



「凪、どうしたの?」
「……」
「言葉で言わなきゃ分からないよ?」
「…徹のイジワル」



それだけ言って、さらにギュウッと腰に腕が強く巻きつく。ここでいつものあれだと完全に確信が持てた。

腰に巻きついた腕をゆっくりと外し、片手を凪の顔に当て顎を軽く上げる。予想通り、泣きそうな、いや、もう軽く泣いているのだろう、そんな事を思わせる目と目が合う。



「…怖い夢、見たんでしょ?」
「……」
「素直にそう言ってよ」
「…だって徹、からか…」
「からかわないよ別に。俺、これまでからかったことある?」



ないでしょ、と暗に言えば凪はコクリと首を縦に振った。

普段、しっかり者である凪は甘え方が下手である。下手というより、知らないと言った方がいいのかもしれない。

弟妹や下級生、はたまた同級生の面倒をよく見る凪は、両親や上級生、先生からもよく頼られている。

そんな彼女は甘え方が分からずに育ったのだろうなと最近思うようになった。



「そんなところにいないでこっちおいでよ」
「でも」
「このベッド、セミダブルだから」
「いや、」
「あーもう、いいからおいでってば!」



言葉とともに、ベッドサイドにいた彼女をベッドの上に引きずり上げた。

こっちおいで?といいながら緩慢な動作で腕を広げる。数秒彼女は躊躇ったが、ゆっくりと近づいてきた。そんな彼女をまたまた緩慢な動作で腕の中に閉じ込めた。

身体はまだ、震えていた。幼子をあやすように、背中をゆっくりと撫でる。ゆっくり、ゆっくりと。



「それでさ、どんな夢、見たの?」
「…笑わない?」
「当たり前デショ」



そう小さく笑って返せば、ゆっくりと話出した。



「徹、が、か…肩を壊しちゃう夢見て…しかも、それ、試合中で…徹、無理して…」



心臓が跳ねた。大方いつも通り、戦闘に巻き込まれた夢だとか誰かが殺された夢だとか、そんなものだと思っていたから。


…まさか。


正直に言うとこんな気持ち。いつも幼馴染という腐れ切った関係の下、岩ちゃんと一緒に三人でいた。

凪は昔からしっかりしていて、俺によく注意をしていた。試合前に女の子達に囲まれている俺に岩ちゃんと一緒にボールを投げ付けて蔑んだ目で見てきたことも少なくない。

そんな彼女が発した今回の言葉を咀嚼できた今、ゆっくりと顔の筋肉が緩み始めたのが自分でも分かった。


正直に言おう。めちゃくちゃ嬉しい。



「…ふふふ」
「笑わないって言ったのに…!」
「笑ってないよ」
「じゃあ何で」
「嬉しかったんだよ」
「?」



腕の中の人の顔には疑問符が浮かんでいる。そりゃそうだと思いながら腕に力を込める。温かみが、さらに強く感じれる。



「徹?」
「んー?」
「どうしたの?ついに壊れた?」
「壊れた…って、酷いこと言うね凪」
「だって急に笑い出すし、変な事言い出すんだもの。一ちゃんだってきっとこう言うよ」
「ここで岩ちゃん出さないで」
「なんで」
「いいから」
「?…分かった」



徹、どうしたの?と言う彼女の声を聴きながら俺は尚も笑む。彼女の震えはいつの間にか収まっている。

腕の中の温かさに浸りながら、俺は長年諦めていたあることを実行しようと決めていた。




これは意外と脈があるかもしれない。








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