井さんとお兄さん








「ノルマ終わった奴から順次休憩に入れ!いいな!」

「「「「「「うス!!!!!」」」」」」



マネージャーの一人にドリンクを貰い、自分のタオルを首に引っ掛け体育館の壁と床に身体を預ける。

ふぅ、と息を付いていると、笑いながら龍が隣に座ってきた。



「随分とお疲れのようだな、主将さん?」

「うるせー。まだいける」



とは言っても、かなり疲労は蓄積されているのだろう。何故なら今日、



「俺、お前が授業中に居眠りしてんの初めて見た」



小学校のころからずっとクラス一緒(9年間同じクラスとか…)で、初めてのことだぜ。

そう、俺は生まれて初めて授業中に居眠りをした。

皆が言っている居 眠りの感覚を初めて体感した。何とも不思議なものだなあれは。



「そういうお前は授業中に寝過ぎだあほう」

「イデッ……叩くなよ麗…」



非難を込めてこちらを見てくれ幼馴染みを、淡々と見返していたら、さつきが話しかけてきた。



「どうした?」

「あの、前お兄ちゃん、私にメニューについて聞いたでしょ」

「あぁ、あれか」

「おー、さすがさっちゃん!麗と同じで仕事が早い!」

「えへへ」



龍ちゃんありがとう、って言う妹は可愛い。可愛いんだけど、その笑みの先にコイツがいるのが気に食わない。

この笑みの先にいるのが大輝なら許した。大輝なら、許す。可愛いからアイツも。



「おーい、麗ー」

「ん?… 何だ」

「何だ、じゃねーよ。さっちゃんの用事」

「…あぁ、悪いさつき」

「別にいいよ。最近お兄ちゃんお疲れだったし」

「そうか…ありがとうな。どうだ?」

「えっとね…」



そう言ってさつきは話し出す。それに暫しの間耳を傾けた。



「…へぇ、なるほどな」

「盲点だったなそれは…」

「どう、かな?」



少しばかり不安そうにこちらを見る妹の頭にポンと手を置いた。



「いい意見をありがとな、さつき」

「ほんと助かるぜ!」

「よかったぁ…」



役に立ってよかった、と笑う妹。

可愛い実に可愛い。



「…さつき」

「なあに?」

「今度、あそこに行くか。勿論俺の奢りで」

「いいの?!!」

「貴重な意見をくれたお礼だ」

「やった!」

「れーい、俺は?」

「ついて来てもいいけど、払わないぞ」

「ですよねー…でも行く」

「来るのか」

「だって最近行ってないだろ?」

「忙しかったしなぁ…」



ここ最近忙しくて足が遠のいていたカフェを頭に浮かべる。久しぶりにあの落ち着いた空間に身を委ねたいと思った。

疲労回復にはもってこいな場所だ。



「今週末は試合ないよお兄ちゃん」

「お!」

「じゃあ、週末に行くか」

「うん!」

「よしっ」



目がキラキラとさせている妹と幼馴染を見ると、こちらまで笑みが漏れてくる。

周りを見ると、そろそろ練習を再開しても良さそうなくらいには皆、休憩が取れているようだ。

龍に目をやると、意図を察したようで、頭を軽く上下させてから声を張り上げた。



「お前らー、そろそろ始めっぞー!!」

「「「「「うス!!!!!!」」」」」

「さつき、それコーチにも話しておいてくれるか?」

「うん」

「頼んだ」

「麗!」

「おー、今行く」



さつきの指摘、明後日くらいには反映できるかなと思いながら呼ばれた方へと向かう。

ま、なんにせよ



「可愛くて仕方のない妹だよ」



まったくな。







(2014/02/23 更新)


…妹要素、特になくね?なんて思っちゃダメですよ負けですよ









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